日本大百科全書(ニッポニカ) 「巻柿」の意味・わかりやすい解説
巻柿
まきがき
徳島県美馬(みま)郡つるぎ町、大分県北部の耶馬渓(やばけい)の名物であるほか、岐阜県下でもつくられている。柿のへたと種子をとり、干し上げてから十数個をロールハム状に巻き込み、納豆苞(づと)のように藁(わら)でくるんでから荒縄できつく巻き上げる。食べるときは必要なだけ荒縄をほどき、小口から切って取り分けるが、飴(あめ)状に発酵した干し柿は、果肉の締まったうまみを備えている。能登(のと)(石川県)の巻きブリ同様に保存食の一種で、つるぎ町の場合、屋島の戦いに敗れた平家の落人(おちゅうど)が巻柿の製法を伝えたといわれてきたが、そうした伝承はともかく、丸柚餅子(ゆべし)とともにわが国では古い菓子の一つである。巻柿は懐石料理にも使われる。
[沢 史生]