日本大百科全書(ニッポニカ) 「市場価格表示」の意味・わかりやすい解説
市場価格表示
しじょうかかくひょうじ
valuation at market prices
国民経済計算における総生産や国民所得などの金額を表示する際の評価方式の一つで、市場で取引される価格で評価し、表示するもの。ある財やサービスが実際に市場で取引される際の価格は、それの生産過程において投入された原材料や部品などの価格(中間投入)、賃金や利潤(要素所得)、生産設備の減耗を補填(ほてん)する費用(固定資本減耗)、それに、生産者から直接に政府に支払われる間接税から構成されている。政府から補助金を受けている場合には、その額だけ市場価格は安くなるから、以上の価格から補助金相当額が差し引かれる。たとえば、国民総生産は、国民が1年間に生み出した純粋の価値額の合計であるから、市場での取引価格から中間投入を差し引いたものである。したがって、市場価格表示の国民総生産は、要素所得、固定資本減耗、間接税を合計し、そこから補助金を差し引いたものとして計算される。国民総生産、国内総生産は、通常、市場価格表示である。これに対して、価値額を生産にかかわる費用だけで評価する方式は、要素費用表示とよばれる。
[高島 忠]