帰さ(読み)カエサ

デジタル大辞泉 「帰さ」の意味・読み・例文・類語

かえ‐さ〔かへ‐〕【帰さ/還さ】

《「かえるさ」の音変化「かえっさ」の促音無表記》
帰る時。帰る途中
「そのみわざにまうで給ひて、―に」〈伊勢・七八〉
帰ること。特に、賀茂祭り翌日斎王いつきのみこ紫野斎院に帰ること。
「またの日―見むと人々の騒ぐにも」〈かげろふ・下〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「帰さ」の意味・読み・例文・類語

かえ‐さかへ‥【帰さ・還さ】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「かえるさ(帰━)」の変化した語。古くは「かえっさ」か )
  2. 帰りみち。かえるさ。
    1. [初出の実例]「そのみわざにまうで給ひて、かへさに」(出典:伊勢物語(10C前)七八)
    2. 「夜更けぬれど、〈略〉かへさにわたらせたまふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
  3. 帰ること。特に、賀茂祭の翌日、斎王(いつきのみこ)上賀茂から紫野の斎院に帰ること。また、勅使や舞人、陪従(べいじゅう)が従うその行列。祭のかえさ。
    1. [初出の実例]「けふのかへさ、見にいで給ひける上達部など、帰り給ふみちに、かく人の申せば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)

帰さの語誌

( 1 )万葉集」に既に例がある同義の「かへるさ」に対し、中古に入ってからみられるようになる語。「かへるさ」の「る」が促音化した「かへっさ」を「かへさ」と表記したところから生じたものか。
( 2 )中古の散文では「かへるさ」よりも多用される。しかし和歌では、「万葉集」以来の「かへるさ」の方が優勢で、「かへさ」の例は多くない。

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