( 1 )賀茂神社に斎王が置かれたのは、薬子(くすこ)の変と呼ばれる争乱の時に、その鎮圧を願って皇女有智子内親王を入れたのがはじめと言われる。
( 2 )斎王の居所である斎院は、平安京北郊の紫野(雲林院の南)にあり、神に奉仕する清浄潔斎の生活ではあるが、来訪する貴族との文化的交流の場となる雰囲気があった。ために後宮外の社交圏にもなっていたが、後鳥羽院皇女礼子内親王(一二〇四‐一二)を最後として廃絶した。
京都の上賀茂(かみがも)・下鴨(しもがも)社(賀茂別雷(かもわけいかずち)神社・賀茂御祖(かもみおや)神社)に奉仕した皇女また女王のこと。正しくは賀茂大神斎王(おおかみのいつきのみこ)という。斎院とは斎王の居所からきた名。山城(やましろ)国(京都府)愛宕(おたぎ)郡紫野(京都市北区)にその居所のあったことから紫野院とも称した。平安遷都のあと、ことに賀茂社を崇敬したことより、古くよりの伊勢(いせ)の神宮の斎王制(斎宮(さいくう))に倣い、嵯峨(さが)天皇が810年(弘仁1)有智子(うちこ)内親王を斎王としたことに始まる。『延喜式(えんぎしき)』に伊勢神宮斎宮の制に準じての制を記しているが、それによると、天皇即位ののち未婚の内親王のうちより卜定(ぼくじょう)、もし内親王のいない場合は、女王のうちより卜定し、宮城内の便宜のところ(雅楽寮や宮内省など)を、卜(うらな)いにより初斎院(しょさいいん)と定めて、禊祓(みそぎはらえ)をすませたのちに、そこに入らしめ、3年間の潔斎生活ののちさらに吉日を選んで河水に臨んで禊祓をしたあと、紫野の斎院に入らせた。それより4月の賀茂祭に奉仕した。この制は、後鳥羽(ごとば)天皇の皇女礼子内親王まで続き、以後廃絶した。
斎王の退下は天皇の譲位、崩御の場合が原則、その斎院に事務処理のため斎院司(し)が置かれ、長官、次官、判官、主典、宮主、史生、雑使などがおり、別に別当を置いて院務全般にあたらせ、またさらに女別当(おんなべっとう)を置いて内侍(ないし)、女蔵人(にょくろうど)らを監督させた。斎院司には、つねに榊(さかき)を立て、注連(しめ)を張り、不浄を避けさせた。なお、これとはまったく別に、神祇官(じんぎかん)の西院(さいいん)のことを、そこで祭務をつかさどったことから、斎院の名でよぶことがあった。
[鎌田純一]
賀茂神社に奉仕する未婚の皇女もしくは王女。斎王(さいおう)/(いつきのみこ),賀茂斎院ともいう。伊勢神宮の斎宮にならって設置された。平安時代の嵯峨天皇皇女,有智子(うちこ)内親王に始まり,鎌倉初期の後鳥羽天皇皇女の礼子内親王に至り,その後は廃絶した。卜定によって斎院となった女性は宮城内に設けられた初斎院での3年間の潔斎を経て斎院(場所としての)に移る。その場所は一条大路の北方,紫野に所在したため紫野斎院とか略して紫野院と呼ばれ,単に野宮(ののみや)とも称した。今日の京都市上京区の七野(ななの)神社がその跡という。斎院には斎院司という役所があり,長官以下の官人や多くの女官たちが働いていた。年中行事である賀茂祭(葵祭)には斎院御禊,祭りの当日の渡御,翌日の還立(かえりだち)(祭りのかえさ)といったぐあいに重要任務を帯びた。歴代の斎院の中でも村上天皇皇女の選子内親王は,円融から後一条天皇までの5代,50余年間にわたって在職し,もって大斎院と称された。さらに選子に仕えた女房たちの中には優れた歌人が輩出し,一つの文芸サロンを形成した。
→斎宮(さいぐう)
執筆者:朧谷 寿
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…鈴振り神子,湯立神子,神楽神子とも称される。これにもローカルタームがあって,宮中の神事に奉仕した御巫(みかんこ),伊勢神宮の斎宮(いつきのみや),賀茂神社の斎院またはアレオトメ,熱田神宮の惣の市(そうのいち),鹿島神宮の物忌(ものいみ),厳島神社の内侍(ないし),美保神社の市(いち)などが著名である。けれども現在では,本来の神がかり現象を示すものはほとんどみられない。…
※「斎院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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