祭り
まつり
feast; festival
神を迎え供献侍座して神と人とのつながりを深める宗教行事。日本の祭りは稲作儀礼を中心とし,その年の農耕を始めるに先立って行われる春の祈年祭,収穫を終えて田の神を再び山に送る秋の感謝祭が主となるが,悪疫退散を祈願する御霊信仰 (ごりょうしんこう) 的な祭祀もあり,これは主として夏季に行われる。また祖霊を祀る行事は,古くは正月と盆に行われたが,のち次第に盆に限られるようになった。祭りを構成する基本的型式には,一般的に次のようなものがある。 (1) 物忌 神霊を迎えるための浄め。 (2) 神降ろし 旗,幟,柱などで祭りの場所を標示して神を迎える。 (3) 神人共食 直会 (なおらい) ともいわれ,これにより神と人とのつながりが強められ,その恩恵がもたらされるとする。 (4) 神輿渡御 (みこしとぎょ) 祭りが行われる地域内に強い神性を充満させ,これによって悪霊を払う意味をもつ。ときには神輿ではなく,馬の背につけた大幣あるいは根付きのさかきや獅子頭であることもある。世界の諸民族のどのような祭儀も,霊的存在に祈願して,健康,安全,繁栄を求めるものであり,一般に集団によって行われ,そこでは「われ」と「なんじ」の区別が薄くなり,「われわれ」という一体感が強められる。祭儀はまた非日常的なもので,王が乞食に,女性が男性になるような役割の転倒が行われる。これに関連して,祭りにはある役割を演じる演劇的要素がある。古代ギリシアの演劇は宗教的な祭儀に由来することが明らかにされている。
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祭り【まつり】
集団儀礼の一つ。日常から切り離された特別な時空に人々が集い,各種の儀礼行為を経験することにって,潜在的に持つ理念を実感として共有する行動様式。神話的な世界の中で神と人が融和するための宗教的な祭りが原始的かつ一般的。盆などに死霊をまつるのは魂祭という。時期的に予祝と農耕開始の春祭,除疫の夏祭,収穫の秋祭,鎮魂の冬祭など。祭礼は神霊の降臨で開始される。夜間の来臨が多い(宵宮(よみや),暗闇祭)。神霊を招くには幟(のぼり),鉾(ほこ),柱などを飾り,神霊の送迎のため神輿(みこし),山車(だし)などの神幸行列が行われる。玉取祭,綱引きなどの競技,火祭,神楽(かぐら)などの芸能,虫送神事,御田植祭などの農耕儀礼,卜占(ぼくせん)などの行事や,甘酒祭,芋煮神事といった神人共食も祭りの重要な要素である。祭りの主宰者は神主出現前は頭屋(とうや)など集団の長で,古くは女性であった。神社の祭祀圏を構成する人びとが地域的に限定されているのを氏子という。
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まつり【祭り】
集団による儀礼行動の一つ。本来は原始・古代宗教の集団儀礼を総称し,現代では文化的に一般化されて,祝賀的な社会行事を呼称するのによく使われる言葉となっている。日本の祭りは伝統文化として重要であり,神社神道では今でも祭りを中心にしているほどだが,世界の宗教文化史上にも注目すべき社会現象である。日本語のマツリは,マツル,マツラフという動詞で上位の者に奉仕する意味の語の名詞形とみられる。語源的にはマツとマチは同根で,見えないものが見える場所,接触しうる場へ来るのを歓待する意味をもつ。
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世界大百科事典内の祭りの言及
【神道】より
…他方,西欧諸国の日本研究・紹介者の間では,Shinto,Shintoismの語が一般化したため,昭和に入り日本人の間でも,神道ということばが一般に用いられるようになり,日本固有の信仰の多様な性格を,古神道,神社神道,教派神道,民俗神道をはじめさまざまに分けて考えることも一般化した。
[神と祭り]
古代の日本人は,人間の力を超えたものに対し,おそれ,かしこむ心を抱き,そうした心情をおこさせるものをカミと呼んだ。山,川,海などに畏怖を感じ,根源的で神聖・清浄なものを見た人々は,生い茂った樹木や巨大な岩なども神聖視した。…
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