帰去来の辞(読み)ききょらいのじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「帰去来の辞」の意味・わかりやすい解説

帰去来の辞
ききょらいのじ

中国、東晋(とうしん)代の詩人陶潜(とうせん)の作。全編60句よりなる楚辞(そじ)体の文。韻を踏んでいる。405年(義煕1)秋、13年の役人生活に終止符を打って、故郷へ帰った陶潜の心境を吐露したもの。ときに41歳。「帰りなんいざ、田園まさに蕪(あ)れなんとす」の名句で始まり、役人を辞めることが正しい生き方であると宣言、帰る途中の情景、家族の歓待を受けてくつろぐさまを述べ、後半は、翌年春の田園の情景のなかで、迫りくる老いを悲しみ、自然に任せて天命を全うすることを願う。淡々とした筆使いで、世俗を超越した高い境地を歌うものとして、由来、田園文学金字塔と評される。

[石川忠久]

『小尾郊一著『全釈漢文大系31 文選6』(1976・集英社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android