魚の群れを海底から水面まで仕切って囲み,漁獲する帯状の大網。網裾には沈子(いわ)がつき,建てる網の丈はほぼ水深に準ずる。漁法は湾を利用したものが多い。まず湾口・湾内で網を半円状に建て回し,湾に入った回遊魚の退路を塞ぎ,次に網の内部に漁船を乗り入れ,引網,敷網,刺網,タモ網などで漁獲する。この漁法の特徴から〈塞ぎ網〉ともいう。湾に恵まれない漁場では,まず魚群を網船で建て回してから漁獲する。建切網漁の特徴は,最少でも2種以上の漁網を併用すること,また建切網内部で用いる漁網や捕らえる魚の種類によって違いがあるが,他の網漁に比べ操業規模が大きいこと,である。操業には建切船1,2艘,はし船1艘,魚取船数艘,一組当りの漁夫数名~数十名を要する。漁場としては,すでに天文期(1532-55)にこの網漁が確認される豆州内浦をはじめ,紀伊,内房,土佐幡多郡柏島,志摩鳥羽浦,伊勢の各沿岸が有名である。しかし,この漁法は沿岸回遊魚が減少する明治中期を境に衰退していった。漁獲物はカツオ,マグロ,ボラ,フグなどである。
執筆者:田島 佳也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
… 出し網類は垣網だけを敷設したもので,垣網によって誘導された魚群は巻網,敷網,刺網などで漁獲するものである。建切網ともいう。このほか内湾・入江などの浅い所に網を立て,潮の干満を利用して漁獲をはかる網を建干網というが,これも出し網類に分類される。…
※「建切網」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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