大網(読み)だいもう

精選版 日本国語大辞典 「大網」の意味・読み・例文・類語

だい‐もう ‥マウ【大網】

〘名〙
腸間膜にあたる、胃の後胃間膜の一部。胃の下部から下方に垂れ下がり、腹壁直下で腸を覆っている。大網膜。〔解剖辞書(1875)〕
② 大きい網。〔後漢書‐郎顗伝〕

おお‐あみ おほ‥【大網】

〘名〙 大きな魚網
※宇津保(970‐999頃)吹上上「あま・かづき召しつどへて、よき物かづかせ、漁父(むらきみ)召しておほあみ引かせなど」

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デジタル大辞泉 「大網」の意味・読み・例文・類語

だい‐もう〔‐マウ〕【大網】

胃の下部から垂れて腸の前面を覆う脂肪に富んだ薄い膜。胃腸を保護する。大網膜。

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改訂新版 世界大百科事典 「大網」の意味・わかりやすい解説

大網 (おおあみ)

大型の漁網または大がかりな網漁をいう。室町時代から江戸時代にかけ,漁業生産が著しく増大し,諸国の特産物として漁獲物が産地化された理由の一つは,各地で大網が考案された結果による。元和(1615-24)のころ,肥前長門を中心にブリ,マグロの大敷網(台網)が考案され,やがてそれが越中,能登方面へ伝えられた。また,陸前,陸中方面では江戸時代初期からサケ,マグロの大網(台網)による漁業の発達をみたほか,陸奥ではタラの建網,北海道ではニシン建網,サケの大謀網などがおこなわれた。これら,大型網漁にかかわる技術は,後の大型定置網漁を育てる基盤となった。そのほか,引網では九十九里浜のイワシ大地引網,巻網では塩飽諸島のタイ巻網,土佐のマグロ巻網,カツオ大網,それに紀州で網取式捕鯨に用いた漁網等はいずれも大仕掛けなものであった。材質は稲藁苧麻(ちよま)が主であったが,明治時代に綿紡績業が発達すると,木綿材の網が普及し,より大型化された。
網漁業
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大網 (だいもう)
greater omentum

大網膜ともいい,胃の前下縁から下方に腹腔内にたれている広い膜で,前垂れのように小腸の集まりを前方からおおい,前腹壁のすぐ後ろにある。もともと前後に重なりあった4枚の腹膜が互いに癒着してできたもので,発生学的には胃の腸間膜すなわち胃間膜の後部がはなはだ変形して生じたものである。子どものときは上述の癒着が十分に起こらず,したがって前後の2葉に分かれて,その間の腔所は胃の後方にある網囊の下方へのつづきをなしている。前葉は胃の大彎(だいわん)からつづき,後葉は横行結腸に付着している。大網は腹膜のひだであるから,その表面は単層の扁平上皮でおおわれ,ごく滑らかである。そして数多くの血管が分布し,脂肪組織に富んでいる。その作用は腹腔内の液を吸収するほかに,腸のうねりと腹壁との間のすきまを満たす詰物として役だっているらしい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大網」の意味・わかりやすい解説

大網
たいもう
greater omentum

胃の大彎に始って,横行結腸の前,さらに前腹壁の内面にエプロン状に深く垂れ下がっている腹膜の一部。部位によっては網状になっているのでこの名がある。発生学的には前,後の2葉があり,前葉は胃の大彎で後胃間膜をつくって前腹壁のうしろを垂れ下がり,後葉は続いて後方へ折り返して上方に向い,横行結腸に結合している。まれに大網腫瘍や大網ヘルニアの発生をみることがある。

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百科事典マイペディア 「大網」の意味・わかりやすい解説

大網【だいもう】

大網膜とも。胃の大彎(だいわん)から下方にたれ下がる腹膜のひだ。小腸の前面をおおい,前腹壁のすぐ内面にある。多数の血管が分布し脂肪組織に富む。腹腔内の液を吸収し,腸と腹壁の間の詰物になるほか,腹腔内の炎症部位などに癒着(ゆちゃく)してその広がりを防ぐ働きがある。

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世界大百科事典(旧版)内の大網の言及

【腹膜】より

…胃も腸間膜をもっていて,これは〈胃間膜〉と呼ばれ,これに前腹壁と結合する前胃間膜と,後腹壁と結合する後胃間膜とが区別できる。前後の胃間膜ともかなり複雑な形を呈していて,胃の後方に〈網囊〉と呼ばれる腹膜でかこまれたへやをつくっており,そこから後胃間膜の一部が下方に長くのびて〈大網〉をなしている。大網は発生学的に腹膜が4枚重なり合って生じたものである。…

※「大網」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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