漁法(読み)ギョホウ(英語表記)fishing method

デジタル大辞泉 「漁法」の意味・読み・例文・類語

ぎょ‐ほう〔‐ハフ〕【漁法】

魚介類を捕る方法。釣り・定置網やなかごもりなどを用いる方法がある。

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精選版 日本国語大辞典 「漁法」の意味・読み・例文・類語

ぎょ‐ほう‥ハフ【漁法】

  1. 〘 名詞 〙 魚介類などをとる方法。網漁法、釣漁法、その他の方法に大別する。
    1. [初出の実例]「それ故漁法の発達も亦世界一で、魚の調理法に於ても非常な発達を遂げたわけです」(出典:日本料理通(1930)〈楽満斎太郎〉料理方の巻)

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改訂新版 世界大百科事典 「漁法」の意味・わかりやすい解説

漁法 (ぎょほう)
fishing method

漁獲の方法,すなわち水産動植物を採捕する方法をいう。漁獲の道具が漁具であるから,漁法は漁具の運用方法であるともいえる。水の中のものをとりあげるので水と生きものを分ける操作が基本になる。さらにとりあげることを効率よくするためには,ある程度の密度に集めることが必要になるので,集める方法も漁法の中に含まれることになる。運動性の大きいものと,定着性あるいは運動性の小さいものとでは,当然その方法は異なるが,自由を奪う操作も必要となる。これらのことがとりあげる操作と一体をなしていることもあるし,別々に手順を追って行われることもある。

 まず,とりあげる方法は(1)手あるいは簡単な道具で挟みとる,(2)釣針などで引っかけ,あるいはもり(銛),やす(簎)などの刺突具で突きさす,(3)網ですくう,からめる,(4)その他,というように分けられる。(1)は最も原始的だが,貝類海藻はこの方法でとられることが多い。現在でも海人は活躍しているし,多くの場面でこの方法が使われる。(2)は道具を使う方法としては最も原始的なものといえよう。漁労も陸上の狩猟の延長として始まったと考えられるので,槍などがまず使われたと思われる。もり,やすなどがそれで,また弓矢(吹矢も含めて)も実際に魚取りに使われた。これらがだんだん発達して,大規模なものは捕鯨砲などになる。カジキの突棒(つきんぼう)漁などもこの方法である。(2)で最も重要なのは釣りで,はえなわのように一度に多くの針を使うこともくふうされている。ただこの(2)の方法では一度に多くのものをとることは難しい。(3)は〈一網打尽〉などという言葉もあるように,大規模にすれば,ひじょうに多くの魚介類を一度にとることができる。したがって主流をなす漁法であって,各種の網漁具がくふうされている。なお,網漁具は運用上,積極能動的に網を動かして漁獲する場合と,網は動かさず定置して魚介類の来遊を待つ場合とがある。(4)のその他はいろいろのくふうがあるが,主としてネズミ捕りのように,いろいろの材料で作ったわなにかけるものが多い。籠,壺,筒,うけ(筌),やな(簗),えり(魞)などがそれで,小規模なものが多いが,かなり大規模なものも含まれる。

世界各地には独特の漁法も見られる。中国,日本に見られる鵜飼いは,動物を使ってする漁だが,このほかカワウソを使って魚を網へ追い込んだり(中国,インド,ヨーロッパ),コバンザメを使ってウミガメを捕ったり(アメリカ,中国,オーストラリア,アフリカ)する例も知られている。毒を使う地方は多い。アイヌには毒矢でクジラをとる漁法があった。この方法はアレウト列島アラスカから北アメリカまで見られたという。たこ(凧)を使う漁法はインドネシアあるいはメラネシアに発生したと考えられているが,ダツを対象とする漁法である。たこに糸をつけ,先にじょうぶな繊維あるいは銅線の,引っぱられるとしまる環をつける。ソロモン諸島ではクモの巣を使う。船上からたこを揚げ,環が水面を飛びはねるように操作するとダツが飛びつき,環がからまって,釣針なしの釣りができる。

前記のようなとりあげる方法を実施するための前段階となる集魚の方法は,二つに大別される。すなわち(1)脅して駆集する場合と,(2)誘って集める場合とである。脅かして追う方法は往々にして魚群を散らすことにもなりかねないので,対象生物の習性と地形その他の条件を十分に勘案して用いる必要がある。たたき網のように竹ざおで水面をたたいたり,イルカの追込網のように鉄管などの一端を水中に入れ,水上で他端を槌(つち)などでたたいて追い込んだりするのは音響で脅かす方法である。鳥の羽をつけた縄(鵜縄)や,カツラなどの木片をつけた縄(カツラ縄),あるいは貝殻をつけた縄を引き回し,水中できらきらする効果で魚群を駆集する方法も使われる。

 誘う方法はいろいろあるが,対象とする種類の習性を利用するものである。餌で誘うのが最も普遍的でいろいろな採捕法と組み合わせて用いられる。釣針に餌をつけて釣り上げる,あるいは撒餌(まきえ)をして集まった魚群を巻網でとる,籠,筒などに餌を入れるなどさまざまである。蛸壺も近年はカニを餌として入れ,タコが入るとふたが閉まるネズミ捕り式が主流となっている。すみかや産卵場所,隠れ場などを提供して誘う方法も多く使われる。蛸壺,ウナギ筒,シイラ漬,柴漬などで,人工魚礁はこれの大がかりなものである。特殊な漁法として佐渡などで行われたサンマ漁がある。産卵期のサンマが浮遊物に卵を産みつける習性を利用し,穴をあけたむしろを船ばたに浮かべ,産卵に寄ってくるサンマを穴から手をさし入れて手づかみにする。これでかなりの漁獲をあげたという。集魚灯は走光性を利用するもので,サンマ棒受網,イカ釣りなどに広く利用されている。音響を利用する方法としては仲間の摂餌音に反応して集まることから,摂餌音を録音しておいて,これを水中に放声し,誘う試みがなされている。定置網の垣網は魚群の通り道を遮断して,囲い網の中に誘導するものだが,誘いと威嚇の中間的方法ともいえよう。

 漁法は漁具と分かちがたく結びついているので〈漁具〉の項目も参照されたい。
漁労文化
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「漁法」の意味・わかりやすい解説

漁法
ぎょほう

水生生物をとる方法。つまり漁獲する方法のことで、魚貝類の習性に対応した漁具が用いられる。漁具はその機能から受動的漁法と能動的漁法に大別することができる。受動的漁法は、漁具を一定の場所に固定して対象生物が漁獲できる状態になるまで待って漁獲する方法で、定置網、敷網、刺網(さしあみ)、釣り、筌(うけ)などがある。能動的漁法は、漁具を積極的に運用して漁獲する方法で、抄(すくい)網、掩(かぶせ)網、巻(旋(まき))網、引網、引縄(ひきなわ)、刺突(しとつ)、鉤引(こういん)、挟把(きょうは)などがある。これらの漁法は単独で行われる場合もあるが、二つないし三つの漁法を組み合わせて行う場合もある。

 漁場の探索には、直接探索法と間接探索法がある。直接探索法は、海面の浮遊物や海鳥の行動、あるいは魚群探知機を使用する。間接探索法は、他船の情報や海洋観測の結果、あるいは過去の経験から推察する。そのほか、魚群を集める集魚灯や撒き餌(まきえ)、音波を利用する誘集法や、漁獲対象の生物の通路を遮断し一定の方向へ誘導させる遮断誘導法、魚群を威嚇して集める駆集法などがある。漁労機械、音響機器や漁具材料の発達により、科学的かつ合理的に、しかも省力化した漁法が行われている。

[吉原喜好]

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