弾き猿(読み)ハジキザル

日本大百科全書(ニッポニカ) 「弾き猿」の意味・わかりやすい解説

弾き猿
はじきざる

棒に紅布製の括(くく)り猿を抱きつかせ、下から竹ばねをはじいて猿を昇り降りさせる玩具(がんぐ)。猿弾きともいう。江戸時代の明和(めいわ)(1764~72)の末に出現した幟猿(のぼりざる)(五月節供の外飾りにつける猿)の着想から生まれた。江戸中期以後、外飾り幟が室内飾りに転移し、幟猿がしだいに衰退したのにかわって流行した。ことに「はじきざる」の語呂(ごろ)が、災いを「弾き去る」という俗信に結び付き、縁起物として迎えられた。

 かつては郷土玩具として全国各地にみられたが、その多くがすでに姿を消している。現在では、宮城県気仙沼(けせんぬま)市唐桑(からくわ)町御崎(おさき)神社の祭礼(1月14~15日)に売られる唐桑の弾き猿、東京都葛飾(かつしか)区柴又帝釈天(しばまたたいしゃくてん)の弾き猿、三重県松阪(まつさか)市の厄除(やくよ)け観音岡寺山(おかでらさん)継松寺で、旧暦初午(はつうま)の日(3月中旬)に露店で売られる松阪の猿弾きなどが代表的である。

[斎藤良輔]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

苦肉の策

敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...

苦肉の策の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android