後ろめたなし(読み)ウシロメタナシ

デジタル大辞泉 「後ろめたなし」の意味・読み・例文・類語

うしろめた‐な・し【後ろめたなし】

[形ク]《「なし」は意味を強める接尾語
うしろめたい1」に同じ。
「心ざしありつる郡司の妻を、―・き心つかはん事、いとほしけれど」〈宇治拾遺・九〉
うしろめたい2」に同じ。
「遥かにかくまかりなむとするに、心細き御ありさまの、…、いとあはれに―・くなむ」〈蓬生
うしろめたい3」に同じ。
「―・き御せうとの心ばへなり」〈狭衣・三〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「後ろめたなし」の意味・読み・例文・類語

うしろめた‐な・し【後なし】

  1. 〘 形容詞ク活用 〙 ( 形容詞「うしろめたし」の語幹に接尾語「なし」の付いたもの )
  2. うしろめたい(後━)
    1. [初出の実例]「昔より今まで思う給へあつめたることをきこえで、世の中になからんことなん、いとうしろめたなき心ちする」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲上)
  3. うしろめたい(後━)
    1. [初出の実例]「うしろめたなき御兄(せうと)の心ばへなり」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)三)
  4. うしろめたい(後━)
    1. [初出の実例]「前(さき)の世に、人の為に後めた无き心を仕(つか)ひ〈略〉如此(かく)(もろもろ)の悪き心を仕ひて」(出典:今昔物語集(1120頃か)一九)

後ろめたなしの語誌

( 1 )蜻蛉日記」や「源氏物語」に用例が見られるが、写本によっては「な」のないものもあり、平安中期に発生したとは確定できない。平安後期以降に一般化しており、中世に至って用例が増加している。
( 2 )「拾遺抄註‐春」には、中世においてこの語は歌語に対する世俗言として意識されていたと見られる記述がある。

後ろめたなしの派生語

うしろめた‐なが・る
  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙

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