御三・御爨(読み)おさん

精選版 日本国語大辞典 「御三・御爨」の意味・読み・例文・類語

お‐さん【御三・御爨】

〘名〙 (「お」は接頭語)
腰元台所で働く下女の通称。おさんどん
※浮世草子・新色五巻書(1698)二「女房しゃら声、ひびき渡てやかましく、お三よんでこひといふに」
② 台所での仕事。炊事おさんどん。
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉一「百姓もすれば米も舂く、お爨(サン)もする、お針もする」
[語誌](1)上方語では元祿一六八八‐一七〇四)以降、また江戸語では明和一七六四‐七二)以降用例が見える。上方語から江戸語へ入った語と思われるが、元々は下女だけでなく、腰元をも指す通名であった。
(2)「随・皇都午睡‐三・中」の諸品の変名の条によれば、近世末期頃には、上方ではむしろ「おきよ(どん)」という言い方が普通で、「おさん(どん)」はもっぱら江戸で、しかも下女の意味に限定して用いられる言い方になっていたことがうかがえる。
(3)仲間内では「おさんどん」、主人からは単に「さん」と呼ばれることが多い。→さん

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