改訂新版 世界大百科事典 「御阿礼神事」の意味・わかりやすい解説
御阿礼神事 (みあれしんじ)
毎年,古くは旧暦4月の中の午の日,現在は5月12日の夜,京都市北区の賀茂別雷(かもわけいかずち)(上賀茂)神社で行われる,古来の神迎えの神事。御阿礼祭ともいう。〈みあれ〉は出現・誕生を意味する。神社の北西約880mの御生野(みあれの)という所に祭場を設け,ここで割幣をつけた榊に神を移す神事を行い,これを本社に迎える祭りである。祭場には,720cm四方を松,檜,賢木(さかき)などの常緑樹で囲んだ,特殊の神籬(ひもろぎ)を設け,その前には円錐形の立砂一対を盛る。この神籬前庭では修祓(しゆばつ)ののち奉幣行事を行い,葵桂を挿頭(かざし)にし,饗饌の儀(献の式)をして,手水をつかい,灯火を消し,矢刀禰(やとね)(神職)5員がそれぞれ榊をもって立砂を3周し,神移しを行う。これを本社に捧持する。本社では,開扉して葵桂を献じ,祝詞を奏して閉扉する。神の出現・再現を感受しようとする神事で,賀茂御祖(かもみおや)(下賀茂)神社では,御蔭祭(みかげまつり)と称する神迎えの神事がある。
→葵祭(あおいまつり)
執筆者:沼部 春友
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報