徳島城跡(読み)とくしまじようあと

日本歴史地名大系 「徳島城跡」の解説

徳島城跡
とくしまじようあと

[現在地名]徳島市徳島町城内

徳島市街地のほぼ中央、東を福島ふくしま川、南を寺島てらしま(現廃川)新町しんまち川、北を助任すけとう川に囲まれた三角洲(徳島)上の標高二―三メートルに立地する近世城郭跡。標高六一・七メートル、東西幅約三六〇メートル・南北幅約二〇〇メートルのしろ山を中心に築かれた。

〔築城〕

天正一三年(一五八五)七月、羽柴秀長・秀次、宇喜多秀家蜂須賀正勝・家政、小早川隆景・吉川元長を将とする羽柴秀吉軍の攻撃を三方より受けた長宗我部元親は、蜂須賀正勝の仲介で秀吉に降伏し(閏八月五日「長宗我部元親書状」徳島城博物館蔵)、八月六日以前に土佐一国を安堵された(閏七月六日「羽柴秀長書状」小早川家文書)。これに伴い四国が諸将に配分され、蜂須賀家政が赤松則房領(置塩領)・毛利吉政領(兵橘領)を除く阿波国を与えられた(「寛政重修諸家譜」「長元記」など)。家政はまず一宮氏歴代の居城であった一宮いちのみや城を修築して入り、その後城地を渭津いのつに置くこととし、長宗我部氏が放棄した渭山いのやま城の大規模な修築を家臣武市太郎左衛門信昆(号常三)と林図書助能勝(号道感)に命じて築城工事に着手した。城普請の手伝いには隣国の領主小早川隆景・長宗我部元親および近江比叡山の衆徒らが秀吉の命で参加し、翌一四年には一応の竣工をみた(「蜂須賀家記」「城跡記」「阿波志」など)。この地を城府と定めるにあたって、渭津の地名は徳島と改められ、城も徳島城と称したとされ、慶長期(一五九六―一六一五)のものと推定される国絵図では城のある島は「徳嶋」と記されている。だが城および城府の名称はその後も数度の変更があった。また城の範囲は「城跡記」に「渭山寺島両城合テ一城トナス」、「阿波志」には「以寺島為外城」とみえ、築城時にすでに福良佐渡守吉武が在城し、天正年中に落城したとされる寺島城の遺構を外郭に取込む城構えであったことがうかがえる。

〔蜂須賀氏と徳島藩〕

徳島城は天正一三年の蜂須賀家政による築城以後、蜂須賀氏歴代の居城、徳島藩の政庁として幕末に至った。蜂須賀氏は尾張国海東かいとう蜂須賀はちすか(現愛知県美和町)出身の武士で、永禄期(一五五八―七〇)には蜂須賀正勝と木下藤吉郎(羽柴秀吉)との関係が生じ、元亀年間(一五七〇―七三)には秀吉の麾下に属したとされる。天正年間には秀吉の中国攻めに従い、播磨制圧後の同九年には播磨龍野城を与えられた。同一三年から秀吉の四国経略にも加わり讃岐・阿波へ進出、長宗我部元親降伏後、正勝の子家政が前述のように置塩領・兵橘領を除く阿波国を与えられた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「徳島城跡」の解説

とくしまじょうあと【徳島城跡】


徳島県徳島市徳島町にある城跡。徳島市街地の中心部、吉野川河口付近の中洲にある標高61mの城山に築かれた山城と周囲の平城からなる。城域は東西約640m、南北約550mで、新町(しんまち)川や助任(すけとう)川など吉野川の分流を外堀とし、さらに瓢箪(ひょうたん)堀などの内堀が築かれた。城山頂上の本丸から東二の丸、西二の丸、西三の丸が連なり、本丸東下には政庁・藩主居館である表御殿、西三の丸西下には隠居所である西の丸御殿があった。現在は城郭建物はなく、石橋が見事な枯山水庭と池汀(ちてい)の石組みや築山がある池泉庭とからなる、桃山時代の特徴をもつ表御殿庭園(名勝)と石垣、堀の一部を残すのみであるが、阿波の青石(緑色片岩)で築かれた石垣は独特の景観を示している。室町時代に幕府の管領(かんれい)であった細川頼之(よりゆき)が城山に築城したのが始まりと伝えられるが、定かではない。1585年(天正13)、阿波に領主として入った蜂須賀家政(はちすかいえまさ)が、本格的な築城に着手し、翌年に完成した。以後、明治維新に至るまで14代、約280年間、徳島藩蜂須賀氏25万石の居城となった。戦国末期から江戸時代まで阿波支配の拠点城郭として、縄張り、石垣、枡形(ますがた)、庭園、内堀などの遺構も残っており、2006年(平成18)に国の史跡に指定された。明治の廃城令で建物はほとんどが撤去されたが、日露戦争の戦勝を記念して、城跡の大半が徳島公園(現在の徳島中央公園)になり、1910年(明治43)には一般に開放された。唯一残っていた鷲(わし)の門は、第2次世界大戦中の1945年(昭和20)、徳島大空襲によって焼失したが、1989年(平成1)に復元された。JR高徳線ほか徳島駅から徒歩約12分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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