六訂版 家庭医学大全科 「心臓病の合併」の解説
心臓病の合併
しんぞうびょうのがっぺい
Heart diseases in pregnancy
(女性の病気と妊娠・出産)
妊娠・分娩時の心機能
心臓のはたらきは妊娠前に比べ妊娠中は非常に増大します。心拍出量は妊娠32週をピークとして妊娠前に比べ30~50%増加し、循環血液量も妊娠32週をピークとして25%増加します。心拍数は妊娠後半に約10/分増加し、酸素消費量は妊娠16週~40週まで15%増加します。
妊娠中は、安静時も睡眠中も心臓は常に軽い運動を強いられている状態といえます。さらに分娩時には陣痛発作時ごとに脈拍数が増加し、間欠期には元の脈拍数にもどります。また、陣痛発作時は酸素消費量が中等度~重度の運動量に匹敵するほどに増加します。分娩第2期中は、子宮からの還流血液および緊張の影響により右心房・右心室が拡張し、
心機能の判定
心臓病をもっている女性が妊娠を希望する場合、最も重要なことは心機能の状態の判定で、表8の分類が用いられます。クラスⅠ、Ⅱは妊娠が可能ですが、クラスⅢ、Ⅳでは母児の周産期死亡率も高く妊娠はすすめられません。表9にクラス別の周産期の母体死亡率を示しました。クラスⅠ、Ⅱでも母体死亡がみられます。
心臓病を合併している女性は、妊娠を希望する場合、主治医や産科医と事前に相談することが重要です。
小島 俊行
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報