心疾患ともいい、心臓の病気の総称で、冠血管や心膜(心嚢(しんのう))の病気も含まれる。心臓の機能障害が生命にとって重要な意味をもつことは古代ギリシア時代より知られていたが、心臓病の存在が正確に認識されたのは屍体(したい)解剖が行われるようになった1500年ころ以降のことである。その後、1628年にはハーベーが血液循環における心臓の役割を明確にし、また17世紀から18世紀にかけては心臓構造物(壁や弁、血管など)の欠損や形態学的な異常が次々と発見された。しかし、これらの心臓病の生前診断が可能となったのは1819年にラエネクが聴診器を発明してからのことであり、その後1895年のレントゲンによるX線の発見、1903年のアイントホーフェンW. Einthovenによる心電計の開発により心臓病の診断はいっそう正確となった。現在ではRI(ラジオ・アイソトープ)検査法、超音波心エコー法、心臓カテーテル検査などにより、ほとんどの心疾患は正確に診断できるようになった。
心臓病の分類に関しては、20世紀初めにマッケンジーJames Mackenzie(1853―1925)が、心不全や不整脈など機能障害と考えられる疾患の概念を導入することにより体系化された。現在では病因により次のように分類されている。
(1)先天性心疾患(心臓奇形) 生下時より心臓に異常を有するもので、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症、ファロー四徴症、大動脈縮窄(しゅくさく)症、大血管転位症などがある。
(2)リウマチ性心疾患 リウマチ熱に合併して生じる心疾患で、その多くは左心系の僧帽弁や大動脈弁を障害し、弁狭窄や弁逆流などの心臓弁膜症の誘因となる。
(3)梅毒性心疾患 おもに大動脈を侵し、大動脈瘤(りゅう)や大動脈弁閉鎖不全症の原因となることがある。
(4)高血圧性心疾患 長期にわたる高血圧症により、心肥大が引き起こされる。
(5)そのほか、狭心症や心筋梗塞(こうそく)などの冠動脈疾患をはじめ、感染性心内膜炎、心筋炎や心筋症、甲状腺(せん)性心疾患、期外収縮や心房細動などの不整脈、うっ血性心不全、心膜炎、心臓腫瘍(しゅよう)、心臓神経症などがある。
[井上通敏]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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