改訂新版 世界大百科事典 「忠臣水滸伝」の意味・わかりやすい解説
忠臣水滸伝 (ちゅうしんすいこでん)
読本(よみほん)。山東京伝作,北尾重政画。前編は1799年(寛政11),後編は1801年(享和1)刊。中国小説《水滸伝》を,日本の代表的な演劇《仮名手本忠臣蔵》の上に移して翻案した小説で,水滸伝物の一つ。洒落本,黄表紙では大家であった山東京伝の読本転向第1作。当時の読者に周知であった《忠臣蔵》の筋書の上に,中国小説の言葉や修辞を生かしつつ《水滸伝》の豪傑たちの面影を移したところに,着想の新しさと趣向の奇抜さがあった。しかし物語は《忠臣蔵》にそのまま寄りかかっており,小説的な独自な展開には至っておらず,生硬で,趣向の遊戯性だけが目だつ失敗作である。ただ江戸期長編読本流行の契機を作ったという歴史的な意義は認めなければならない。
執筆者:高田 衛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報