恋愛三昧(読み)れんあいざんまい(その他表記)Liebelei

日本大百科全書(ニッポニカ) 「恋愛三昧」の意味・わかりやすい解説

恋愛三昧
れんあいざんまい
Liebelei

オーストリア小説家劇作家A・シュニッツラーの初期の印象主義的三幕戯曲。1895年発表。貧しく純情な娘クリスチーネと、その恋人で人妻との関係も続けている不実青年フリッツとの愛の破局を描いた悲劇出世作『アナトール』で定式化された「気軽なふさぎ屋」「可憐(かれん)なおぼこ娘」「社交婦人」という3人の人物類型の間に繰り広げられる、ウィーンを舞台にした一連の愛欲物の一つである。筋立てだけからみると若者たちの軽率な恋愛を批判した作品のようにもみえるが、作者の意図したところはむしろその逆で、世評結末を恐れずに自己の愛に忠実に生きるクリスチーネの生き方を肯定している。

[井上修一]

『森鴎外訳『戀愛三昧』(『鴎外全集 第10巻』1972・岩波書店)』『番匠谷英一訳『恋愛三昧』(角川文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「恋愛三昧」の意味・わかりやすい解説

恋愛三昧
れんあいざんまい
Liebelei

オーストリアの劇作家,小説家 A.シュニッツラーの悲劇。3幕。 1895年初演。永遠の愛など信じない懐疑的な青年に対する,可憐なウィーン娘の悲恋を美しく描く。初演は稀有な大成功を収め,作者は一躍「若きウィーン」派の代表者一人となった。

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世界大百科事典(旧版)内の恋愛三昧の言及

【ドイツ映画】より

…これらの会社はすべて,蓄音機のレコードと映写機のフィルムを等速回転の軸で連結した原始的で幼稚なものにすぎなかったものの,すでに〈ものいう映画sprechender Film〉をつくっていた。しかし,《ウィンザーの陽気な女房たち》《リゴレット》などのオペラを歌と音楽入りで舞台そのままに撮影しただけのもので,まもなく観客に見捨てられ,フランスから輸入された〈文芸映画〉(フィルム・ダール社製作のサラ・ベルナール主演作品など)に人気が集まり,これにならってシラー原作の《ドン・カルロス》(1910),シュニッツラー原作の《恋愛三昧》(1912)などの〈文芸映画Literarischer Film〉がつくられた。それを機に映画の社会的評価が高まり,作家や演劇人たちが協力しはじめ,ドイツ映画は〈キーントップKientopp(活動)〉から〈キノKino(映画)〉,さらに〈フィルムクンストFilmkunst(映画芸術)〉への第1歩を踏みだして,第1次大戦を迎えた。…

※「恋愛三昧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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