想像の共同体(読み)そうぞうのきょうどうたい

百科事典マイペディア 「想像の共同体」の意味・わかりやすい解説

想像の共同体【そうぞうのきょうどうたい】

コーネル大学の政治学者でインドネシア研究を専門とするベネディクトアンダーソン〔1936- 〕が1983年に発表した,ナショナリズム起源流行に関する著作。《Imagined Communities》。まず〈国民〉という政治共同体は想像の産物であり,そこでは国家権力が領土全域にくまなく均等に作用した状態がイメージされていると定義する。その上で,ナショナリズムが18世紀ヨーロッパで生まれ,さらに各地に普及して今日の世界的な制度となる過程を考察する。小説や新聞からナショナリズムと時間観念の関係を解き明かしたこと,言語と〈出版資本主義〉の役割に注目したこと,行政的中心への役人の旅行を世俗的〈巡礼〉ととらえたこと,各地のナショナリズムは先行するそれの〈海賊版〉として作られると論じたことなどが,斬新な点として評価される。ナショナリズム,民族植民地主義などをめぐる後続の研究を啓発した。
→関連項目アイデンティティ国民国家

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