改訂新版 世界大百科事典 「憲法義解」の意味・わかりやすい解説
憲法義解 (けんぽうぎかい)
伊藤博文の著書。1889年(明治22)刊。この年発布された大日本帝国憲法および皇室典範の逐条解説書で,〈大日本帝国憲法義解〉と〈皇室典範義解〉の2部から成る。両者を合わせたものが公刊以来《憲法義解》と呼ばれている。両法案が枢密院に諮詢された際,各条項ごとに説明を付した原案理由書ともいうべき文書が配布された。井上毅が執筆し伊藤が加除修正してできたものであった。両法が制定されるや,この文書に対し伊藤が中心となり井上ほかの草案起草関係者に専門学者を加えた審査委員会をつくり,綿密な共同審査を行って完成したのが本書である。伊藤は当初これを政府の名において官報に掲載する考えをもっていたが共同審査の過程で批判をうけて,天皇に上奏した後,伊藤の私著として刊行することにした。本書はその成立事情からしても明治憲法を理解するうえでの必須の文献とされてきた。
執筆者:結城 光太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報