法令、条約のほか、法令に基づき掲載される告示、公告、国会事項、官庁報告、叙位・叙勲などを一般に周知、公布する目的で発行する国の機関紙。日本では現在、独立行政法人国立印刷局が編集、印刷・インターネット配信を管掌し、日刊(土・日曜、祝日、年末年始は休刊)で発行。官報またはそれに類する刊行物の歴史は、中国では、唐の玄宗皇帝時代(8世紀中ごろ)、宮中の動静や政府の発表などを報ずる「邸報」があり、その後、宋(そう)がその制度を復活させ、「朝報」と題して5日ごとに発行したといわれる。これが世界最初の官報である。日本の官報は1883年(明治16)7月2日、参議山県有朋(やまがたありとも)の建議によって創刊された。発刊の意図は、当時、政党機関紙化し「政府ヲ攻訐(こうけつ)シ、民権ト云(い)ヒ、自由ト称ス」民間新聞の抑圧を目ざしたものであった。しかし官報の創刊が、日本の法令公布制度の近代化に大きな役割を果たしたことは見逃せない。1890年帝国議会開設以来、議会速記録は官報号外によって国民に周知されることになった。第二次世界大戦後の民主社会では官報の役割がいっそう高まり、1973年(昭和48)4月「読みやすい官報」へと紙面を刷新し、1999年(平成11)11月にインターネット版官報の発行、2001年(平成13)9月には情報検索サービスを開始して現在に至っている。なお、2022年(令和4)には、衆参両院で紙に印刷された官報を議員などへ配布することをやめ、おもにインターネット上で閲覧することが決定された。第二次世界大戦後6年間、官報英語版(OFFICIAL GAZETTE)が発行されたこともある。
官報の号数は改元により第1号に戻るが、明治、大正、昭和、平成を通じての発行号数は、創刊100年目にあたる1983年7月2日時点で計2万9960号、平成時代最終日の2019年4月30日時点で3万9093号。令和に入り、2023年3月23日時点で4万0035号に及んでいる(号外を除く)。
[高須正郎・伊藤高史・編集部 2023年8月18日]
『近藤金広著『官報創刊前後』(1978・原書房)』▽『大蔵省印刷局編・刊『官報百年のあゆみ』(1983)』
法律や省令の公布,政府関係人事の発令,各省庁の処分・公示事項などを公式に一般に知らせるための特別な政府広報媒体。大蔵省印刷局で編集発行されている。現在の《官報》は1883年7月2日創刊。《官報》発行のため同年5月10日太政官(内閣)に文書局(初代局長平田東助)が設置されている。しかし《官報》は,系譜的には1868年2月23日明治新政府が京都で創刊した《太政官日誌》にさかのぼる。《太政官日誌》は77年1月まで続き1177号で中止。その後80年,《法令公布日誌》を創刊し事業を福沢諭吉に委託する案が作られたが,開拓使官有物払下事件をめぐる閣内対立のあおりを受けて立ち消えとなり,次いで82年3月あらためて山県有朋が官報刊行を建議,これが翌年実現して創刊となった。現在,《官報》本紙のほかに,解説を目的にした《官報資料版》がある。
《官報》に類する外国の政府広報媒体で最古のものは,ローマ時代カエサルが創始した《アクタ・ディウルナ》で,政府公示事項などを白い板に書いた掲示板状のものであった。次に古いのは唐代前期に生まれた中国の《邸報》で,首都駐在の地方諸侯連絡事務所を通じ,国王の詔勅,法令,人事などを伝達した媒体である。初期は筆写版,のちには印刷され,宋・元・明・清代にも存続,《邸鈔》《朝報》《京報(けいほう)》などとも呼ばれたという。ヨーロッパで代表的なものはイギリス政府の官報というべき《ロンドン・ガゼット》で,1665年11月16日週2回刊の《オックスフォード・ガゼット》として創刊。翌年2月5日第24号から《ロンドン・ガゼット》と改題,それを契機に公式の政府広報媒体となったといわれる。
執筆者:内川 芳美
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出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
…中国,清代の半官半民の官報。中国では漢代にすでに官報の類があったようだが,確認できるものとしては唐代の邸報に始まる。…
…明治政府が戊辰(ぼしん)戦役中に出版した官版日誌類の最初のもので,創刊は慶応4年(1868)2月23日,終刊は明治10年(1877)1月22日の1177号である。日誌の内容は新政府の法令,人事,伺書への回答などであって,行政広報紙あるいは官報の前身ともみることができる。発行間隔は必要に応じて月数回から連日発行までさまざまであった。…
…大学南校,開成校で学んだが中途で退学。1879年官界に入り,駅逓局,文部権少書記官を経て太政官に新設された文書局官報報告主任となり,《官報》の創刊(1883)に尽力した。85年内閣制度の発足と同時に,内閣官報局次長,89年官報局長に就任した。…
※「官報」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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