聴覚障害者と聴覚障害をもたない者の間で、手話を使い、相互のコミュニケーションを仲介すること。また、それを行う人。あるいは、さまざまな手話言語を翻訳して、相互のコミュニケーションを仲介すること。また、それを行う人。
日本では、手話通訳者の数はごく限られたものであった。手話通訳者の養成も、多くは民間の「手話サークル」による講習会に依存したものであり、初めて公的な取り組みが始まったのは、1973年(昭和48)の厚生省(現、厚生労働省)による手話通訳設置事業であった。その後、同省が委嘱して社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが1989年(平成1)に第1回「手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)」を実施し、197名が合格した。以降毎年1回実施されており、2014年(平成26)4月時点で手話通訳士試験に合格し、厚生労働省に登録している者の総数は3265名である。
手話通訳士の資格は登録していない者が名のってはならない(名称独占)が、手話通訳士以外の者が通訳してはならない(業務独占)というわけではない。しかし、聴覚障害者が社会活動や選挙などへ参加するにあたり、円滑な意思疎通を支援するため、国や自治体、公共団体などは手話通訳士などを派遣することが定められている。また、2006年に施行された障害者自立支援法では、自治体が手話通訳士などの派遣業務や要約筆記奉仕員を派遣することが、生活支援の必須事業の一つとして定められている。しかし、2010年に全日本ろうあ連盟が行った調査によると、全国の地方自治体における手話通訳者派遣業務の実施率は43.6%と低く、利用者ニーズへの対応方法、地域間格差、高度な通訳業務を任せられる人材の不足など、さまざまな問題点が浮かび上がった。こうしたなかで、手話を言語として正式に法律で定める「手話言語法」の実現を願う声が高まっており、鳥取県や石狩市(北海道)などでは手話言語条例が制定された。
[編集部]
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