日本大百科全書(ニッポニカ) 「投擲兵器」の意味・わかりやすい解説
投擲兵器
とうてきへいき
grenade launcher
破裂して敵を倒す弾丸(榴弾(りゅうだん))を発射する兵器をいう。歩兵の小銃の銃口部にチューブ型の部品を装着し、空砲で発射するロケット型榴弾や大口径の専用榴弾を、特殊化した発射機で射撃するものなどがある。火薬が発明されるとすぐ、手で投げて発火させたり、炸烈(さくれつ)して敵に被害を与える兵器がつくられた。これが発展して手榴弾(しゅりゅうだん)となった。
他方、火薬で榴弾を射撃する発射武器は銃の初期段階からつくられた。とくに命中精度の期待できない初期の銃では、炸烈して被害を与える榴弾のほうが、銃弾より有効だった。命中精度が高まると銃は狙撃(そげき)用になり、炸烈する榴弾は手で投げる手榴弾へと別れる。
歩兵用の榴弾発射機は、第一次世界大戦や第二次世界大戦でも使用されたが、命中精度などに問題があり限定的な使用にとどまった。ジャングルの遭遇戦など、敵が目視できない場合、榴弾発射機は有効な反撃手段となる。ベトナム戦争中に、アメリカ軍は、40ミリ口径の特殊な榴弾を開発した。40ミリ口径の榴弾は、低い圧力で発射できるところから、軽量のアルミニウム合金製銃身の発射機で発射できた。発射機の設計が容易に行える榴弾が開発されたことから、現在、各国では同様な榴弾を開発し、ライフル型の単発中折れ式榴弾発射機や、大型の回転式弾倉を装備させた連発式の榴弾発射機、小銃に装着する小型の榴弾発射機などを製造し軍用にしている。
他方、口径30~40ミリの高い圧力で発射する大きな射程をもつ榴弾も開発された。この榴弾は、榴弾機関銃(オートマチック・グレネードランチャー)に使用され、三脚に装着したり、装甲車などの武装用に用いられている。
[床井雅美]