装甲車(読み)ソウコウシャ(英語表記)armored vehicle

翻訳|armored vehicle

デジタル大辞泉 「装甲車」の意味・読み・例文・類語

そうこう‐しゃ〔サウカフ‐〕【装甲車】

装甲2を施した車両。特に、機関銃などで武装した軍用自動車。

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精選版 日本国語大辞典 「装甲車」の意味・読み・例文・類語

そうこう‐しゃサウカフ‥【装甲車】

  1. 〘 名詞 〙 火力に対する防御用の装甲をほどこし武器を装備した車両。広義には戦車、装甲人員輸送車、装甲列車などを含むが、主として軽易な装甲をほどこした装甲自動車をさす。〔新しき用語の泉(1921)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「装甲車」の意味・わかりやすい解説

装甲車 (そうこうしゃ)
armored vehicle

乗員を砲弾の破片や銃弾などから防護するために,車体の全部または一部を装甲板で囲った車両。装甲防護力は戦車ほど強くはない。軍用として歩兵部隊の戦闘,兵員輸送,偵察,指揮等に使用されるほか,警察用として治安,警備等にも使用される。走行装置の種類により,無限軌道キャタピラ)を用いた装軌式,タイヤを用いた装輪式,前軸にタイヤを用い後軸を無限軌道とした半装軌式がある。装輪式装甲車が戦場に出現したのは第1次大戦初期の,戦車が使用される以前であり,大戦末期には装軌式装甲車も出現した。しかし装甲車が本格的に使用されるようになったのは第2次大戦からである。第2次大戦中,ドイツ軍およびアメリカ軍が兵員輸送その他の目的で大量の半装軌式装甲車,いわゆるハーフ・トラックを使用したことはよく知られている。第2次大戦後は,核戦争下において,戦車および装甲車が核爆発によって生じる熱線,爆風,放射線から兵士たちを防護できるという有効さがあらためて認識され,戦車の開発,生産と並行して各種装甲車の開発,生産が進められ現在にいたっている。

 装甲車の基本となるのは,武装として機関銃を搭載し,機関銃弾に耐える程度の装甲防護力をもち,8~12名の兵士を乗せて戦場を機動できる装甲兵員輸送車armored personnel carrier(APC)である。近年,対戦車兵器が著しく発達し,歩兵による戦車護衛の必要性が高まったため,装甲兵員輸送車の発展型として装軌式の装甲歩兵戦闘車mechanized infantry combat vehicle(MICV),armored infantry fighting vehicleAIFV)が1960年代後半に出現した。武装として20~35mm級機関砲および対戦車ミサイル発射機を搭載し,装甲防護力も強化されており,戦車と一体になって行動し,乗車したまま戦闘できるのが特徴である。装甲車にはこのほか装甲指揮車,装甲偵察車など各種あるが,いずれも主要装置や部品などを装甲車どうしあるいは戦車や自走砲と共通化し,使用目的に応じて武装や装甲の程度,車内配置等を変化させる,いわゆるファミリー化が図られている。

装輪式は装軌式に比べて道路のない所を走行する能力では劣っているが,路上走行性,経済性,整備補給性などではすぐれている。警察用装甲車はほとんど装輪式であり,軍用でも路上走行の度合が多く高速性が要求される偵察車などには装輪式が多く用いられる。一方,戦車と密接に協同し主として道路以外で行動する装甲車には装軌式が多く用いられる。なお,第2次大戦以降,半装軌式装甲車については新たに開発された例はない。

内燃機関を利用した自動車が実用化されるまでは,陸上部隊の戦場における移動や兵器資材等の輸送はもっぱら人や馬の力にたよっていた。第1次大戦以降,偵察,連絡,兵器資材輸送,後には兵員輸送等の軍事目的に自動車が使用されるようになり,また戦車や装甲車,さらに自走砲も出現して,軍の機械化,近代化が大いに進展した。機械化部隊というのは,特に近接戦闘部隊(歩兵,戦車)に着目し,装甲車化歩兵を主として編成された部隊のことであり,機甲部隊というのは,戦車を中核として編成された部隊のことである。別の表現をすれば,いずれも車両化部隊であって,車両の装甲化の程度が平均的に軽度であるのが機械化部隊,平均的に重度なのが機甲部隊(機械化装甲部隊)である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「装甲車」の意味・わかりやすい解説

装甲車
そうこうしゃ
armored car

戦車に比較して軽度の火力、防護力をもつ戦闘用車両で、おもに兵員輸送、偵察、指揮、歩兵の車上戦闘などに使用される。走行装置の違いにより装軌式(キャタピラー)、装輪式(タイヤ)、半装軌式(前輪タイヤ、後輪装軌のハーフトラック式)の3種類があり、過去には装軌装輪併用式もあった。装輪式装甲車(装甲自動車)の出現は戦車よりも早く、19世紀末にはその原型がみられるが、本格的な発展をみたのは第一次世界大戦においてであり、路上での高速力を利用して、とくに偵察、警戒などの任務に多用された。運用が道路網の整備に依存する度合いが大きい関係上、装輪装甲車はおもにヨーロッパ諸国を中心に発達してきた。装軌式装甲車としては、1918年にイギリスでつくられたⅨ号型が最初で、50人の兵員を輸送できたが、長足の進歩をみたのは第二次大戦後で、核兵器の脅威から歩兵を防護すると同時に、その機動性を高めるために装甲兵員輸送車がクローズアップされた結果による。最近ではその発展型として、歩兵の車上戦闘を目的とした、より重武装重装甲の歩兵戦闘車も出現し、またミサイルなど各種兵器のプラットフォームとしても使用されている。半装軌式装甲車は第二次大戦初頭からドイツ軍が、また後半にはアメリカ軍が兵員輸送用として大量に使用したが、装輪式と装軌式の長所をもつ反面、短所もあわせもつため中途半端な性格に陥りやすく、現在ではあまり使われていない。機構的には戦車に準じており、軍用のほか警察用として治安、警備などにも使用される。

[竹内 昭]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「装甲車」の意味・わかりやすい解説

装甲車
そうこうしゃ
armoured car

防御のための装甲を施した自動車。軍用,警察用として,あるいはアメリカなどでは,民間で現金や金塊輸送などにも使用される。軍用装甲車は,火砲,機関銃 (砲) を装備し,偵察,輸送,戦闘,国内治安維持に使われる。 1899年イギリスで自動車に機関銃を装置したのが初めとされ,1906年までにフランスで砲塔のある装甲車を開発した。第2次世界大戦では,アフリカ戦線で多用された。日本では,上海事変で海軍陸戦隊がイギリスのビッカーズ装甲車を用いたが,32年国産初の九二式重装甲車が開発された。現在使用されているのは,装甲兵員輸送車で,戦車を援護するための歩兵を運搬し,戦車隊に随伴して機動戦を行う。普通,1個分隊 (約 10人) を輸送し,銃弾および砲弾の破片に耐える程度の装甲を装備,自衛用として 12.7mmおよび 7.6mm級の機関銃を装備している。さらに最近では,装甲歩兵戦闘車 armoured infantry combat vehicle (AICVまたは MICV) として,歩兵が乗車したままで,戦闘を行う性能をもつ装甲車が出現した。旧ソ連の BMP-76-PBは,76mm砲1,対戦車ミサイル「サガー」を装備し,乗員のほか歩兵を8人乗車させる。また湾岸戦争で活躍したアメリカのM-2ブラッドリー MICV (→M-2歩兵戦闘車 ) は,乗員3人,歩兵6人乗車,25mm機関砲1,7.62mm機関銃1,対戦車ミサイル発射機2を装備している。

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百科事典マイペディア 「装甲車」の意味・わかりやすい解説

装甲車【そうこうしゃ】

小火器弾を防御できる程度の装甲をとりつけた軍用自動車。機関銃・小口径火砲などを積載するほか,兵員輸送用のものもある。キャタピラー式と車輪式がある。時速40〜100km程度。強行突破の援護,市街戦などに使用する。
→関連項目機械化部隊

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