ジャングル(読み)じゃんぐる(英語表記)The Jungle

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャングル」の意味・わかりやすい解説

ジャングル(シンクレアの小説)
じゃんぐる
The Jungle

アメリカの作家アプトン・シンクレア長編小説。1906年刊。『理性への訴え』誌からの依頼で、シカゴ缶詰工場内情を調査し、その結果を小説化したもので、一種の暴露小説である。リトアニアの移民ユルギスは、缶詰工場で過酷な労働条件のもとで働いている。共働きの妻オーナが上役の手ごめにあったとき、彼はそのボスを殴って投獄される。出獄してみると妻は産褥(さんじょく)熱で死に、嬰児(えいじ)も死亡。希望を失い、一時自暴自棄になるが、結局ユルギスは社会主義に生きる道をみいだす。小説の構成としては後半が安易に流れているが、ここに描かれた缶詰製造過程の非衛生的実態がセンセーションを巻き起こし、政府は工場の衛生管理に乗り出さねばならなかった。

[板津由基郷]

『木村生死訳『ジャングル』(1950・三笠書房)』


ジャングル(密林)
じゃんぐる
jungle

下生えやつる植物の密生する熱帯密林をさす用語。日本ではしばしば熱帯雨林の意味で用いられているが、これは誤解である。熱帯雨林の内部は高木亜高木が密生していて、日光は林床まで届かないから、林床の植物が通行困難なほど繁茂することはない。しかし川沿いや道路沿いあるいは焼畑跡地などでは、日光が十分当たるために、つる植物や灌木(かんぼく)が密生して人間の通行を困難にしてしまう。こうした森林ジャングルの名にふさわしいが、見かけほど分布が広いものではない。ジャングルでは、サルなどを除けば大形の哺乳(ほにゅう)類は少ないが、昆虫や爬虫(はちゅう)類はきわめて多い。

[小泉武栄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジャングル」の意味・わかりやすい解説

ジャングル
The Jungle

アメリカの小説家アプトン・シンクレアの小説。 1906年刊。シカゴの缶詰工場を舞台に,ねずみが群れ,結核患者が痰を吐き散らすという恐るべき環境のなかで働く,しいたげられた労働者の生活を描いて,アメリカ資本主義発展の裏面にひそむ矛盾をつき,アメリカにおけるプロレタリア小説の最高傑作と認められる。大きな反響を呼んだが,皮肉なことに労働者の窮状よりも食肉の衛生に対する世論を喚起し,純正食品薬事法の制定に力があった。

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