抜毛癖(トリコチロマニア)(読み)ばつもうへき(トリコチロマニア)(英語表記)Trichotillomania

六訂版 家庭医学大全科 の解説

抜毛癖(トリコチロマニア)
ばつもうへき(トリコチロマニア)
Trichotillomania
(皮膚の病気)

どんな病気か

 自分で毛を引き抜いたり、毛を根元で折ることにより頭部に毛の短い部分が現れます(図103)。

 頭の毛だけではなく眉毛まつ毛が抜けていることもあります。

原因は何か

 欲求不満や精神的ストレスが原因になっています。多くは小学生、幼稚園児などの小児に現れますが、大人にも発症します。爪を噛んだり、指を吸ったり、チックと呼ばれる周期的に繰り返す筋肉収縮などが同時に認められることもあります。

 本人が毛を抜いていることを自覚していることもありますが、まったく気づいていないこともあります。

症状の現れ方

 境界がはっきりした髪の短い部分が前頭部、側頭部などに認められます。眉毛、まつ毛、腋毛(えきもう)、陰毛に現れることもあります。手の届く範囲や、利き手側に多く現れます。脱毛部が類円形の時は円形脱毛症のように見えることがあります。

 毛の先端は折れたように、あるいは引きちぎられたようにざらざらしています。円形脱毛症のように毛が抜けやすくなっていることはありません。

検査と診断

 心理検査や性格検査を行います。

治療の方法

 自分で毛を抜いていることを指摘することにより脱毛が止まることがあります。難治の場合は心理カウンセリングや精神神経科での治療を必要とします。

病気に気づいたらどうする

 抜毛癖なのか、あるいは円形脱毛症などの他の脱毛症なのか区別することが大切です。

嵯峨 賢次


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

改訂新版 世界大百科事典 の解説

抜毛癖 (ばつもうへき)
trichotillomania

体毛,とくに頭髪を自分の手で引き抜く症状で,10歳代の女子に多い。引き抜いた部分は髪がうすく,不格好になるが,それを承知でなおも引き抜かないではいられないという強迫的衝動に抜毛癖の本質があり,神経症の特異な一型とされる。抑圧できない怒りや攻撃性を抜毛によって解消しようとするという説明が通例だが,自慰行為の代償,または自慰への欲求防衛であるという見方もある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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