最新 地学事典 「拡散物質移動」の解説
かくさんぶっしついどう
拡散物質移動
diffusive mass transfer
ランダムウォークによる物質移動,または化学ポテンシャル勾配に駆動された物質移動で,マグマ系での結晶作用や変成作用における重要な物質移動の機構の一つ。結晶格子内の拡散(固体拡散,volume diffusion),結晶粒界拡散(grain boundary diffusion),粒間流体を媒介とした拡散(diffusion through intergranular fluid)の3種があり,この順に拡散係数は大きくなる。変成作用では粒間流体中の拡散が最も重要で,拡散反応帯の形成や斑状変晶の拡散律速成長において重要な役割を果たす。高温の変成岩では,ざくろ石などの成長累帯構造が固体拡散によって改変される場合がある。また共存する2相間の固体拡散によるFe-Mg交換を利用した地質速度計(geospeedometry)も開発されている。固体拡散ならびにマグマ中の拡散はそのメカニズムによって次の3種に分けられる。1)自己拡散(self diffusion):原子が自分自身の結晶格子中で移動する現象で,化学ポテンシャル勾配は存在せず,ランダムウォークによる原子の移動。実験的には,均質な系において放射性同位体の動きを追跡することで拡散係数を決定。2)トレーサー拡散(tracer diffusion):不純物原子Bが結晶Aの中で移動する現象。B原子が無限に希薄な場合の化学拡散。トレーサー拡散係数は,濃度勾配を小さくした極限で自己拡散係数に近づく。3)化学拡散(chemical diffusion)・相互拡散(mutual diffusion):拡散が固溶体中やマグマ中で起こる場合,系を構成するすべての成分の化学ポテンシャル勾配が拡散の駆動力となる現象。多成分系での取扱いは難しいので,地球科学では注目する成分以外の成分はすべて一つの仮想的成分とみなし,近似的に2成分系の相互拡散として扱うことが多い。この方法による拡散係数を実効2成分拡散係数(effective binary diffusion coefficient:EBDCと略記)と呼ぶ。
執筆者:西山 忠男
出典 平凡社「最新 地学事典」最新 地学事典について 情報

