ざくろ石(読み)ざくろいし(英語表記)garnet

翻訳|garnet

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ざくろ石」の意味・わかりやすい解説

ざくろ石
ざくろいし / 石榴石
柘榴石
garnet

普通に産する造岩鉱物ガーネットともいう。現在知られているざくろ石は23種類であるが、日本ではそのうち11種類が産する。

松原 聰]

種類

もっとも普通なものが、鉄礬(てつばん)ざくろ石、灰礬(かいばん)ざくろ石、灰鉄ざくろ石満礬ざくろ石で、ほかに苦礬ざくろ石灰クロムざくろ石、ヒブシュざくろ石(加水ざくろ石)などがそれらに次ぐ。特殊なものとしては、バナジンを含む灰バナジンざくろ石と桃井ざくろ石、ジルコニウムを含むキムゼイざくろ石などもある。

 ざくろ石は組成変化にきわめて富み、苦礬ざくろ石、鉄礬ざくろ石、満礬ざくろ石を端成分とする固溶体をパイラルスパイトpyralspite、灰鉄ざくろ石、灰礬ざくろ石、灰クロムざくろ石を端成分とする固溶体をウグランダイトugranditeとよぶ。ざくろ石のケイ素の一部を四つの水素で置換されたものがヒブシュざくろ石で、普通は灰礬ざくろ石でこの現象がおこりやすい。水素がケイ素を凌駕(りょうが)すると加藤ざくろ石katoite(加藤石)となる。

[松原 聰]

産状

結晶は、斜方十二面体、偏菱(へんりょう)二十四面体をしていることが普通で、ほかに塊状、粒状などをなす。パイラルスパイトは塩基性、泥質の変成岩によく産出するほか、苦礬ざくろ石は超塩基性岩、鉄礬ざくろ石は火山岩、花崗(かこう)岩、花崗岩質ペグマタイト、満礬ざくろ石はマンガン鉱床にもよくみられる。ウグランダイトはスカルンや蛇紋岩中にきわめて普通に産するほか、アルカリ火山岩中にもみられる。灰バナジンざくろ石は変成したウラン―バナジン鉱床中とマンガン鉱床中にのみ発見されている。キムゼイざくろ石はカーボナタイト、ノリングざくろ石knorringite(苦土クロムざくろ石)はキンバレー岩、メイジャーざくろ石majorite(苦鉄ざくろ石)は隕石(いんせき)中といった特殊な産状のものもある。

[松原 聰]

構造など

ざくろ石の構造は、基本基として独立のSiO4四面体(ケイ素を中心にもつ酸素の四面体)をもち、2価の陽イオン(カルシウム、鉄、マンガン、マグネシウム)は8個の酸素原子に囲まれる位置に、3価の陽イオン(アルミニウム、鉄、マンガン、クロムなど)は6個の酸素原子に囲まれる位置にある。ざくろ石を粉末にしたもの(金剛砂)は研磨材として利用される。また、磨いてとくに美しいものは宝石として用いられ、血のように赤い透明なもの(多くはパイラルスパイトに属する)は、1月の誕生石である。英名は、ザクロの実に似ていると考えられたところから、ザクロの木のラテン名granatusに由来する。

[松原 聰]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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