二重拡散対流(読み)ニジュウカクサンタイリュウ(英語表記)double diffusive convection

デジタル大辞泉 「二重拡散対流」の意味・読み・例文・類語

にじゅうかくさん‐たいりゅう〔ニヂユウクワクサンタイリウ〕【二重拡散対流】

二つ要素拡散に寄与する場合の対流。二種類の媒質それぞれに生じる対流のほか、水の場合、温度のほかに塩分濃度の違いが浮力に寄与する対流(熱塩循環)が知られる。

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岩石学辞典 「二重拡散対流」の解説

二重拡散対流

温度の他に,水に溶けている塩分の濃度も不均一な場合に,それらの両方が浮力に関係するので複雑な熱対流を生じる.これは二重拡散対流と呼ばれる.この現象が海洋の中で起こる場合に,熱塩循環と呼ばれる[長倉ほか : 1998].液体密度が濃度と温度など二種類の要素で支配され,流体中における成分の拡散速度と熱の拡散速度が異なる場合には,下方の密度が大きくても上下方向に対流が起こり混合が生じる.このように温度勾配濃度勾配の両方に起因して密度差ができて起きる対流を二重拡散対流という[Turner : 1973].熱い塩水と冷たい塩分の少ない水を混合した場合には,塩分濃度と温度は液体の密度に対しては逆の効果を示し,高い塩分濃度は液体の比重をさらに高くし,逆に高温による熱膨張は液体をより軽くする.そのために加わった液体が液全体と混合する間に二重拡散(double diffusive)作用が行われる.これは周りの液体との間に温度勾配と濃度勾配があるので密度差による対流が起こる.拡散速度と時間との関係を考えると,一般に静穏な状態では化学成分の拡散は対流に比べて非常に遅く,混合しても拡散のみでは容易に均質にはならない.対流と拡散作用とでは均質に対する効果は非常に異なるのが普通である[鈴木 : 1994].このような二重拡散対流の概念が層状貫入岩体の変化に応用されている.カナダのマスコックス貫入岩体で二重拡散対流あるいは多重拡散対流がマグマ内部で作用し,重力による層化が局所的な規模となり,小さな部分対流によっていくつかの水平層に分割されると考えられた[Irvine : 1980].この場合は熱が主に岩石の上部から失われ,マグマの底部分別結晶作用によって組成が変化し,中間の位置では対流や拡散による垂直方向の移動によってマグマの混合があり,頂上部では汚染作用が行われる.それぞれに分離した対流層ではその内部の温度および組成が相対的に均質となり,水平の対流層の間には相対的に薄い液体の層が拡散界面(diffusive interface)となり,この面を通して熱と化学組成が交換される.化学成分がこの拡散界面を通して拡散するよりも,熱ははるかに速く拡散するので層状構造は相対的に長く持続される.熱が拡散界面を通して上下方向に移動すると,界面上部の液体の温度が上昇し密度は減少する.反対に層の下は密度が増加する.密度の高い層から結晶が晶出しマグマの底部に結晶が濃集すると,次第に重みで粒同士が押されて密になり,粒の間の液が搾り出される.このような結晶間の液体が対流によって上昇することが考えられる.底部の大部分の結晶は他の場所で晶出して沈積したものではなく,比重の重いマグマが沈積した場所で結晶が直接晶出したことが予想される[鈴木 : 1994].

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

海の事典 「二重拡散対流」の解説

二重拡散対流(海洋)

海水の密度は、圧力の他水温と塩分によって決まる。このような二成分系においては、最初密度的に安定な成層であっても、二つの成分の拡散係数に差があると 不安定を起こして、対流を起こすことがある。このようにして起こされた対流を二重拡散対流と呼ぶ。熱の拡散係数は塩分のそれに比べ100倍も大きく、海洋 中にはソルトフィンガー型対流と拡散型対流の二種の二重拡散対流が生じている所があり、海洋微細構造の決定と海水の混合に重要な役割を果たしている。 (永田)

出典 (財)日本水路協会 海洋情報研究センター海の事典について 情報

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