採集狩猟民(読み)さいしゅうしゅりょうみん

百科事典マイペディア 「採集狩猟民」の意味・わかりやすい解説

採集狩猟民【さいしゅうしゅりょうみん】

農耕牧畜ではなく,野生動植物の採集狩猟および漁労により主な生計を立てる人々。今日の採集狩猟民は,東南アジアのネグリト系の人びと,アフリカのピグミーサンコイ,オーストラリアのアボリジニーなどが知られるが,他の生業に適さない遠隔地で外部の影響を受けながら存在している。一般に狩猟採集民は野生食糧の分布に従ってバンドという単位で移動生活する。それゆえ道具は人力で運べる単純なものに限られる。バンドの構造はいくつかの小家族が状況に応じ離合集散するという単純なものである。バンド内部での平等性は高いが,性別による役割分業(男性は狩猟,女性は採集)は明確である。現代の採集狩猟民にみられる平等性や分配・再分配などの制度・慣習については,石器時代の名残とみなす立場と,被植民地化の影響によってここ数百年の間に現れた比較的新しい現象とする立場の間で論争がある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の採集狩猟民の言及

【採集狩猟文化】より

…価値ある食物である肉を求めて男は専業的な狩人となり,一方,女は従前どおり植物採集を行った。また肉の全食物中に占める割合は,のちに現れた北方採集狩猟民の例外的な場合を除いて,2割から4割にすぎず,採集狩猟民は一般に女性が行う採集にその生活を依存している。男女にみられる生計活動上の分業,および扶養者と被扶養者という年齢による分化を除くと,社会の成員は対等な立場で社会生活に参画し,職業,身分,階級等の分化も政治権力の集中化もみられないので,一般に,採集狩猟民の社会は平等主義をその成立基盤としているといってよい。…

※「採集狩猟民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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