改訂新版 世界大百科事典 「接地層」の意味・わかりやすい解説
接地層 (せっちそう)
surface layer
地表面上の大気を高さ方向に区分したときに,地表面の影響を全面的に受けている最も下層の大気をいう。接地境界層,等流束層ともいう。この層中では運動量,熱,水蒸気の鉛直方向の流束(フラックスflux)が,地表面での値とほとんど等しいとみなされている。この意味で,地表における値と変わらない一定の流束をもつ気層つまり流束一定の気層と呼ばれることもある。
実際には地表から数十mの高さで,この層中では大気安定度が中立の場合,風速の鉛直分布は対数法則で表され,渦拡散係数が高さに比例することが知られている。
地表面に接する層内で,気温が上層にいくほど高くなっている状態を接地逆転surface inversionといい,夜間放射によって,地表面近くの気層が,上層より冷却が大きいために発生する。逆転層内では,静的安定度がよく,人工発生源による汚染空気が逆転層によって抑えられるため,上空に拡散できないので,大気汚染,特にスモッグの被害が起こりやすい。
→大気境界層
執筆者:花房 竜男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報