一般に生物の標高による高度分布をいい(海・水面下の垂直分布は深度分布として区別し,ここでは陸上に限定する),水平分布の対語。植物の垂直分布は,植生の変化とそれによってつくり出される相観の変化によって,いくつかに区分されたもので,垂直分布帯と呼ばれる。日本ではふつう低地から順に,標高500m以下の照葉樹林域を地形によって低地帯,丘陵帯,標高500~1500mの夏緑広葉樹林域を山地帯,標高1500~2500mの針葉樹林域を亜高山帯,標高2500m以上の高木群落のないところを高山帯などと区別する。動物の分布は植生の垂直分布の変化に従って変わる。気温は高度100mごとに1℃低下するとされ,高地性の種は低温適応性であるが,鳥類など温度適応の幅の広い高等動物では,その適応性の範囲なり,生活環境としての植生選好が優先する。例えば,ノゴマは北海道の平地の草原にも大雪山の高山草原にも繁殖する。富士山の溶岩流の青木ヶ原では,標高900mの下部でも亜高山性,低温性のヒガラやコガラ,小哺乳類では高山性のヒメヒミズが分布し,火山砂のため高地性のヤチネズミの住まない2000mの高地まで低地性のスミスネズミが進出している。しかし,森林鳥類では一般に森林の垂直分布に従って近似の生息種が入れかわる。例えば,クロツグミ→マミジロ→アカハラ,コルリ→コマドリ→ルリビタキ,センダイムシクイ→エゾムシクイ→メボソムシクイが低山地→山地帯→高山帯へと入れかわって分布する。なお,森林内でも,林冠部,中部,下層部,灌木,草本部,地上といった層別の垂直的な採餌すみわけ分布がみられる。
執筆者:黒田 長久
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同一の地域でも、山に登ると気温が低下し、それに伴って植物の種類相や群落が変化する。このような高度による植物分布の様相を垂直分布という。その変化の状態はほぼ水平分布に対応している。海抜高度による植物分布の状態をみると、連続的ではなく、植生やフロラが急激に変化する所がある。そのような不連続によって区分したのが垂直分布帯である。本州中部では下から上に向かってシイ・カシ帯、ブナ帯、シラビソ帯、ハイマツ帯、ヒゲハリスゲ帯が区分できる。盆地などで冷気湖が形成される所では垂直分布帯が一部逆転することもある。
垂直分布は山ばかりでなく凹地(くぼち)にもみられ、死海沿岸のように海面より低い所では、本来は亜熱帯であるが、気温が高くなり、熱帯の植生がみられる。
[大場達之]
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