六訂版 家庭医学大全科 「接着ブリッジ」の解説
接着ブリッジ
せっちゃくブリッジ
Bonded bridge
(歯と歯肉の病気)
接着ブリッジとは
歯に対して修復物を装着するために用いられる一般的な材料(セメント)は、修復物や歯に対し直接接着性をもつものではなく、それらとセメントとの間に生じる摩擦力の効果を期待して修復物を保持しています。
これに対し、歯質や金属などの修復物の表面に直接接着する材料(接着性レジンセメント)の研究が進められることにより、従来の方法とは少し異なった形態での修復が行われるようになりました。
利点と欠点
接着ブリッジは、主に金属でつくられるブリッジに対し、接着性レジンセメントを使って歯に固定するため、一般的に行われている方法と比べて次のような特徴があります。
①強固に接着するため、欠損部を補う人工歯を支える歯(支台歯)をほとんど削除しない状態でつくり、装着することができます。したがって、歯を削ることによって歯の神経に与える障害を減らすことができます。
②支台歯は表からみえる部分を削らなくてもすむため、外観上自分の歯の色調を損なわずにすみます。
③歯をおおう部分が小さいため、修復物の辺縁が歯肉に障害を与えることが少なくなります。
④歯の神経にダメージを与えにくいため、神経を取る治療をしなくてすむなど、治療回数や治療時間が少なくてすみます。
⑤患者さんには歯を削るという精神的ダメージを与えません。
以上のような利点がありますが、欠点もあります。健全なエナメル質(歯の表面の硬い層)が十分残っていないと脱落しやすくなります。また、歯の噛み合わせる力や噛み合わせの上下関係などの条件による制限が多くあります。
接着ブリッジの適応
これらの特徴から、接着ブリッジは、両隣に健全なエナメル質がある少数歯欠損部分や、歯の成熟度が低く、一般的な冠で人工歯を支えるタイプのブリッジを装着するのがためらわれる若年者の少数歯欠損部に用いられます。ただし最近では、金属に代わってグラスファイバーを用いた接着ブリッジがよい成績をあげており、近い将来積極的に用いられるようになる可能性もあります。
羽村 章
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報