携帯デジタル音楽プレーヤー(読み)けいたいでじたるおんがくぷれーやー(その他表記)portable digital music player

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

携帯デジタル音楽プレーヤー
けいたいでじたるおんがくぷれーやー
portable digital music player

半導体メモリーや小型ハードディスク光ディスクなどの不揮発性メモリーを用いて、多量の圧縮されたデジタル音楽データを記録・再生できる携帯用の音楽プレーヤー(デジタルオーディオプレーヤー)のこと。製品は数十から数百ギガ(10億)バイトのデータを記録するハードディスク型、メモリーカードをも併用できる内蔵メモリー型、圧縮記録されたMDCD-Rなどの音楽を再生する光ディスク型に大別される。従来アナログ信号からのコピーのような音質劣化はなく、圧縮技術の向上によりCD並みの音質が得られ、CDプレーヤーなどと同様なランダムアクセス、再生リストをつくっての一瞬の頭出しも可能である。

 音楽データを圧縮するMP3は国際標準規格MPEG-1にある3種のうち、もっとも圧縮率の高い方法で、12分の1程度まで圧縮してもCD並みの音声が得られることから、インターネットでの音楽配信用に広く使用されている。とくに、2000年初めまではMP3の使用がほとんどであったため、デジタル音楽プレーヤーはMP3プレーヤーとよばれていた。その後、MP3以外の圧縮方式も種々な著作権保護技術と組み合わせ多用されるようになったので、今日の呼び名になる。現在では、データ圧縮率が16分の1までの標準規格AAC(Advanced Audio Coding)、20分の1のソニー製のATRAC(Adaptive TRansform Acoustic Coding)3やマイクロソフト製のWMA(Windows Media Audio)などの独自の方式が開発され使用されている。

 携帯型の音楽プレーヤーの普及は、アナログ・カセットテープのウォークマン(1979年発売)からである。1990年代はじめにはデータ圧縮によるミニディスクとコンパクトカセットによる小型・デジタル化が進み、1993年にはMP3も規格化された。このころは、安価で数百メガ(百万)バイトの10時間超の録音能力をもつCDやMDが主流で、ハードディスクや半導体メモリー利用の方式が追い付いたのは2005年(平成17)ごろである。

 携帯デジタル音楽プレーヤーが急速な普及をみるのは、2001年のアップル社のiPod(アイポッド)の発売からである。iPodは記録容量1ギガバイトの小型ハードディスクをもち、インターネットからパソコン経由の1曲のダウンロード価格はわずか99セントであった。このシリーズの4ギガバイトのiPod miniは2004年に日本にも上陸。さらにアップル社は、2005年にフラッシュメモリーによる1ギガバイトのiPod shuffleと4ギガバイトで画面付き薄型iPod nanoを、2007年にiPod複合の携帯電話iPhone(アイフォーン)を発売している。同社製品は2006年にはこの分野のアメリカ市場の4分の3、日本市場の2分の1を占め、年6000万台ともいう世界市場をリードしている。これに対して、日本のメーカーの多くは、大容量メモリーとさまざまな圧縮技術とを組み合わせて数百数千曲の音源ファイルを収納するスリムな製品や、音質劣化を抑えた新製品を販売し、さらにギガバイト級のメモリーをもつ携帯電話への展開を進めている。

 ダウンロードには、4分の楽曲であれば圧縮しても4メガバイト前後のデータ容量が必要となるが、毎秒3.6メガビットの3.5世代携帯電話では10秒弱、毎秒12メガビットのADSLでは数秒、毎秒100メガビットの光ファイバーでは3分の1秒ですむ。

[岩田倫典]

『小島邦男著『iモード』(2002・ナツメ社)』『亀山渉他著『IDG基礎から学ぶ情報圧縮技術――圧縮の秘密はどこにあるのか!』(2003・IDGジャパン)』『シード・プランニング編・刊『携帯デジタルプレーヤーの最新市場動向』(2005)』『石川温著『Web2.0時代のケータイ戦争――番号ポータビリティで激変する業界地図』(2006・角川書店)』

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IT用語がわかる辞典 の解説

けいたいデジタルおんがくプレーヤー【携帯デジタル音楽プレーヤー】

デジタルオーディオプレーヤー。⇒デジタルオーディオプレーヤー

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