高速インターネットを支える光通信技術で使用するケーブル。データを光信号に変換して伝達する。主な素材に透明なガラス繊維を使い、従来の銅線などのケーブルと比べノイズの混入が少ない。多くは通信会社が回線を敷設し、2019年3月末時点の世帯カバー率は全国98・8%。第5世代(5G)移動通信システムの基盤でもあり、国は予算を計上して早期整備を目指している。
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光通信に用いられる導波路。「光を導く繊維」という意味であり、光信号が伝搬する中心部のコアとよばれる部分と、その周辺を覆う同心円状のクラッドとよばれる部分の2種類の透明な誘電体(ガラスまたはプラスチック)から構成されている。コアの屈折率をクラッドのそれよりもすこし(0.1~1.0%程度)大きくすることにより、コアとクラッドの境界での光の全反射現象を利用してコア内部に光を閉じ込めて、光信号を遠方に伝える。
[坪井 了・三木哲也]
使用される誘電体の材料によって光ファイバーは3種類に分類される。石英を主体とした石英光ファイバー、窓ガラスと同様な成分のガラスを用いる多成分ガラス光ファイバー、および透明度の高いプラスチックを用いるプラスチック光ファイバー(POFともよばれる)である。このうち、損失がもっとも低く伝送特性も優れているのは石英光ファイバーであることから、これは光通信用として広く使われている。外径は125マイクロメートルに統一されており、髪の毛ほどの細さである。光を伝えるコアの径は数マイクロメートル~数十マイクロメートルとさらに細い。多成分ガラス光ファイバーは、石英光ファイバーのような低損失を実現できないので、通信用ほど低い損失を必要としない用途に限られる。また、プラスチック光ファイバーは損失が大きいため短距離(数十~数百メートル)の用途に限られるが、大口径化による取り扱いやすさ(接続が容易、曲げがきつくても折れにくいなど)から屋内の装置間の配線や自動車内のワイヤハーネス(配線)などに使用されている。
[坪井 了・三木哲也]
光ファイバー内の光の伝わり方により、SM(シングルモード)型とMM(マルチモード)型に大別できる。SM型光ファイバーは、コア径が数マイクロメートルであり、このような細径のコア内においては光信号はただひとつの伝搬モード(光線の伝わり方)しかもたないため、非常に優れた伝送特性を発揮する。MM型は、コア径が数十マイクロメートルの大きいものであり、伝搬モードが非常に多く存在する。そのため、光信号が乱れやすく長距離の通信には適していないが、コア径が大きいのでコネクターなどの部品が安価にできるため、LAN(ラン)などの構内用として使われる。MM型は、コア部の屈折率の形状によってさらに二つに細分される。コア部の屈折率をクラッドの部分に対して階段(ステップ)状に大きな値を保つSI(ステップインデックス)型と、クラッドの境界からコアの中心に向けて屈折率を緩やか(グレーデッド)に大きな値へと変化させるGI(グレーデッドインデックス)型である。GI型は、屈折率の変化を放物線状にすることによって伝搬モード間の伝搬速度差を極小化しており、SI型に比べて伝送特性が大きく改善される。そのため、通常使われているMM型光ファイバーはほとんどがGI型である。
[坪井 了・三木哲也]
『榛葉實著『光ファイバ通信概論』(1999・東京電機大学出版局)』▽『佐藤登監修、電子情報通信学会編・刊『IT時代を支える光ファイバ技術』(2001)』▽『山下真司著『イラスト・図解光ファイバ通信のしくみがわかる本』(2002・技術評論社)』
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紡糸された誘電体よりなる光導波路。コアと呼ばれる中心付近の屈折率の高い部分とクラッドと呼ばれる周辺の屈折率の低い部分よりなる。光はコアとクラッドの境界で全反射を繰り返しつつ,コアの中を伝搬する。光ファイバーの原理はかなり古くから知られていた。1927年には多数のファイバーを束ねたバンドルファイバー(ファイバーオプティクスともいう)を用いて光学像を伝送するアイデアが出され,50年代に入ってこれが医療用として人体内部の観察に用いられるようになった。しかし,当時のファイバーは光の伝送損失が数千dB/kmときわめて大きかった。光ファイバーが通信用として脚光を浴びるようになったのは,70年,アメリカのコーニング社において20dB/kmという低損失なファイバーが実現されてからである。以来,光ファイバーに関する研究開発は爆発的に進められ,0.2dB/kmといった極低損失なファイバーも得られるようになった。光ファイバーは構成材料の面からガラスファイバーとプラスチックファイバーに大別され,さらにガラスファイバーは石英系ガラスファイバーと多成分系ガラスファイバーに分類される。通信用としては損失の少ない石英系ガラスファイバーがおもに使われており,プラスチックファイバーは照明装置用や装飾用として光エネルギー伝送によく使われている。ガラスファイバーの直径は0.1~0.3mm,プラスチックファイバーの直径は0.5~1mm程度である。光ファイバーのような導波構造においては,径方向と軸方向の位相関係から特定の全反射角をもった光だけが伝搬可能であり,これをモードと呼んでいる。ファイバー中を伝搬しうるモードの数は,光の波長,コア径,コアとクラッドの屈折率差などによって決まる。1個のモードのみを伝搬させ得るファイバーを単一モードファイバー,多数のモードを伝搬させ得るファイバーを多モードファイバーと呼ぶ。また,後者のうち,屈折率がコア内で一様で,コアとクラッドの境界で階段状に変化するものをステップ形ファイバー,コア中心で屈折率が最大で,径方向になめらかに低下しているものをグレーデッド形ファイバーと呼ぶ。通信用に使われている石英系ガラスファイバーは傷がなければ十分な強度を有しているが,金属に接触するなどして外部からの損傷を受けると著しく強度が劣化する。このような傷を防ぐために,紡糸直後のファイバーに薄いプラスチック樹脂を被覆(一次被覆)したものをファイバー素線と呼んでいる。さらに,取り扱いやすくするためにファイバー素線にナイロンやポリエチレンなどを被覆(二次被覆)したものをファイバー心線と呼んでいる。
なお,実際にファイバーを使って伝送路を構成する場合には,必要な心数のファイバー心線を集合したうえで,外力に対して光ファイバーを十分保護するために外被をかけたものを地下の管路や電柱に敷設する。これを光ファイバーケーブルと呼んでいる。
執筆者:島田 禎晋
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離れた場所に光を送る伝送路のこと.電磁気の影響を受けずに高速信号を長距離に伝送できるため,デジタル通信を中心に多くの通信用途に使われている.ごく近い距離には光に対して透過率が高いプラスチックも使われているが,伝送損失が大きいので,長距離用には石英ガラスがもっぱら用いられている.伝送損失は0.3 dB/km 以下に抑えられていて,失われている光の量は1 km で数% 程度である.光ファイバーはコア(core)とよばれる芯と,わずかに屈折率の低い外側のクラッド(clad)と呼ばれる部分とそれらを覆う被覆の三重構造になっている.この状態を光ファイバー素線という.コアとクラッドの屈折率の差は0.2~0.3% 程度である.ガラス製光ファイバーの製造にはMCVD法(modified chemical vapor deposition),OVD法(outside vapor deposition),VAD法(vapor phase axial deposition)などによって内周部と外周部で添加物の種類や濃度を変えて母材がつくられる.コアの屈折率を上げるためにはGeやPが使われ,クラッドの屈折率を下げるためにはBやFが添加される.こうして出来た母材を縦方向にして約2000 ℃ の電気炉に入れ,石英が溶けて自重で糸状に引き伸ばされて垂れてきたものを,シリコン樹脂ほかで被覆して光ファイバー素線がつくられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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(荒川泰彦 東京大学教授 / 桜井貴康 東京大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 (株)朝日新聞出版発行「パソコンで困ったときに開く本」パソコンで困ったときに開く本について 情報
…光はふつう直進するが,屈折率の大きいガラスを芯とし,その外側を屈折率の小さいガラスでくるんでファイバーとすると,ファイバー中に光を通すことができる。このグラスファイバーは光ファイバーとも呼ばれる。1960年代中ごろにおいては,グラスファイバー中の光伝播損失は1000dB/km以上あり,伝送帯域幅も狭く,ファイバーは折れやすかった。…
… 時代はさらに転回し,現在はすでに次の世代の通信方式ともいうべき光通信の時代に入っている。これは光を用い,髪の毛ほどの細いガラス繊維からなる光ファイバーを伝送媒体とする通信方式である。光も電磁波の一種であるので電気通信の延長線上に位置づけられる方式であるが,従来の方式と比べると,光ファイバーのもつ低損失の伝送特性,広帯域の周波数特性,低漏話で外来電気雑音の影響を受けないすぐれた耐雑音特性,温度依存性の少ない安定性,細心性による多対化やケーブル敷設工事の容易性など,光通信には多くのすぐれた特徴があり,画期的な通信伝送方式として広く活用されるようになった。…
…そのため,民間レベルから実質的な要求が生まれる以前に,〈ニューメディア〉の名を冠したさまざまなプロジェクトが政府・企業のなかから矢継ぎ早に提出された。 1984年9月から電電公社(現,日本電信電話株式会社)が東京の三鷹,武蔵野で実験を開始した光ファイバーによるディジタル通信網INS(Informahon Network System)〈高度情報通信システム〉,11月から同じく電電公社が回線とシステムを,民間491社が情報ソフトを提供して実用サービスを開始したキャプテン・システムは,ニューメディア・ブームの具体的なモデルケースとして大々的に宣伝された。当時の〈ニューメディア構想〉では,1990年代に,INSの全国ネットワーク,無線系の直接衛星放送,高品位テレビ放送,文字多重放送,ファクシミリ放送,静止画放送,有線系のCATV,ビデオテックス(キャプテン),VRS(画像応答システム),テレビ電話,ファクシミリ通信,さらには個別のパソコンやビデオの出力に至るさまざまな情報・通信経路が,1台の端末(テレビ受像器)に統合されるはずであった。…
※「光ファイバー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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