放射強制力(読み)ほうしゃきょうせいりょく(その他表記)radiative forcing

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「放射強制力」の意味・わかりやすい解説

放射強制力
ほうしゃきょうせいりょく
radiative forcing

気候変動要因を量的に評価するために用いられる概念。気候システムは,太陽放射地球放射の間に不釣り合いが生じると,それを解消するように変化する。したがって,気候システムが外部要因(外部強制)をうけて最初に生じる放射の不釣り合いの大きさによって地球温暖化や寒冷化の潜在能力を評価することができる。この潜在能力を放射強制力と呼ぶ。その値は,基準となる状態からの差として,1m2あたりに 1秒間に正味流入する放射エネルギー量(W/m2)で表す。正の値は流出よりも流入が多い状態を表すため地球を温める方向に作用し,負の値は逆に地球を冷やす方向に作用する。たとえば,太陽放射が 2%増加する場合や大気中の二酸化炭素濃度が 2倍に増加する場合の放射強制力は,どちらも約+4~5W/m2に相当する。気候変動に関する政府間パネル IPCC第5次評価報告書によると,1750年を基準とした 2011年の人為起源の全放射強制力は約+2.29W/m2であり,よく混合された温室効果ガス(二酸化炭素,メタン一酸化二窒素,ハロカーボン類)の濃度変化による放射強制力は約+2.83W/m2,そのうち二酸化炭素によるものが約+1.82W/m2(約 64%)である。また,エアロゾルの放射強制力の見積もりには不確実性が顕著に大きいとされている。

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