一酸化二窒素(読み)イッサンカニチッソ(英語表記)dinitrogen monoxide

デジタル大辞泉 「一酸化二窒素」の意味・読み・例文・類語

いっさんか‐にちっそ〔イツサンクワ‐〕【一酸化二窒素】

亜酸化窒素の正式名称。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「一酸化二窒素」の意味・わかりやすい解説

一酸化二窒素
いっさんかにちっそ
dinitrogen monoxide

窒素酸化物の一つ。亜酸化窒素nitrous oxideと誤称することもある。また、少量を吸うと顔面の筋肉がけいれんし笑ったようにみえるので笑気(しょうき)laughing gasともよばれる。

 硝酸アンモニウムを180~250℃に加熱分解して得られる。

  NH4NO3―→N2O+2H2O
300℃以上では爆発する。かすかな甘味芳香をもった無色気体。次亜硝酸の無水和物に相当するが、水溶液は中性である。常温では安定でハロゲン、アルカリ金属とも反応しない。高温では分解し酸素を生じるので燃焼を助けるため、硫黄(いおう)などは空気中よりも激しく燃える。N-N-Oの直線状分子で、物理的性質は二酸化炭素に似ており、圧縮液化しボンベ(上部は青色、下部はねずみ色)で市販される(液体の比重は1.226、測定温度零下89℃)。普通、酸素と混ぜて麻酔剤として用いられる。毒性は弱く比較的安全であるが長時間になると酸素欠乏症をおこすこともある。ほかにクリームの泡立て、有機化合物の酸化剤として用いられる。

[守永健一・中原勝儼]


一酸化二窒素(データノート)
いっさんかにちっそでーたのーと

一酸化二窒素
  N2O
 式量   44.01
 融点   -90.90℃
 沸点   -88.57℃
 密度   気体 1.977g/L(0℃,1気圧)
 (比重) 液体 1.226(測定温度-89℃)
 溶解度  59.62mL/100mL(水25℃)
 臨界温度 36.5℃
 臨界圧  71.7atm

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化学辞典 第2版 「一酸化二窒素」の解説

一酸化二窒素
イッサンカニチッソ
dinitrogen monoxide

N2O(44.01).酸化二窒素,亜酸化窒素ともいう.硝酸アンモニウムの熱分解でつくられる.室温で無色の気体.融点-90.9 ℃,沸点-88.6 ℃.液体,固体ともに無色.N-N-O直線構造(N-N0.112 nm,N-O0.119 nm)で双極子モーメント0.17 D.室温では化学的に安定である.海洋土壌窒素肥料や工業活動により大気中に放出され,大きな温室効果をもつ気体である.年々大気中の濃度は増加しており,一酸化窒素とともに大気汚染物質としての窒素酸化物(NOx)のおもなものである.高温では分解して酸素を放出し,金属,炭素,硫黄,リンなどとはげしく反応する.水に多少溶けるが次亜硝酸とはならない.麻酔性をもち,吸入すると顔の筋肉をけいれんさせ,笑ったように見えるので笑気ともよばれる.吸入麻酔薬として用いられる.また,半導体の製造にも用いられる.[CAS 10024-97-2]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一酸化二窒素」の意味・わかりやすい解説

一酸化二窒素
いっさんかにちっそ
nitrous oxide

化学式 N2O 。分子量 44.01。亜酸化窒素,笑気ともいう。常温,常圧で無色の気体。融点-90.8℃,沸点-88.5℃。硝酸アンモニウムの熱分解により得られる。

NH4NO3→N2O+2H2O

かすかな芳香と甘味のある気体で,麻酔作用をもつ。加熱した炭,金属類は一酸化二窒素中でよく燃焼する。歯科,外科手術の麻酔薬として使用された。

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栄養・生化学辞典 「一酸化二窒素」の解説

一酸化二窒素

 N2O (mw44.23).亜酸化窒素,笑気ともいう.常圧で無色透明の気体.吸入麻酔薬として使われる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の一酸化二窒素の言及

【酸化窒素】より

…単に酸化窒素というときは一酸化窒素NOをさす場合が多い。
[一酸化二窒素dinitrogen monooxide]
 化学式N2O。酸化二窒素,亜酸化窒素(俗称)とも呼ばれる。…

【麻酔】より

…麻酔法が急速に発展したのは19世紀に入ってからであった。1799年デービーHumphry Davy(1778‐1829)は笑気(一酸化二窒素N2O)吸入の麻酔作用を発見,ロングCrawford Williamson Long(1815‐78)は1842年エーテル麻酔で頸部腫瘍摘出術を行った。歯科医W.T.G.モートンは46年10月16日マサチューセッツ総合病院臨床講堂でエーテル麻酔を供覧した。…

※「一酸化二窒素」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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