放射線滅菌(読み)ほうしゃせんめっきん(英語表記)radiation sterilization

改訂新版 世界大百科事典 「放射線滅菌」の意味・わかりやすい解説

放射線滅菌 (ほうしゃせんめっきん)
radiation sterilization

放射線は殺菌効果を有しており,これを積極的に利用するプロセスを放射線滅菌と呼んでいる。

現在世界的に広く実用に供されているプロセスに医療用具の放射線滅菌がある。近年プラスチック製ディスポーザブルタイプの熱に弱い医療用具が数多く使用されるようになっているが,これにコバルト60からのγ線を2~3Mrad程度照射して滅菌するプロセスが利用されている。従来はエチレンオキシドによるガス滅菌が行われてきたが,操作が簡便でなく,ガスの吸着残留による悪影響などに問題があり,それに対し製品をパックした後簡単に滅菌できることや,構造上ガス滅菌が困難な対象物にも適用可能であるといった特徴のため,しだいに放射線滅菌に置き換えられつつある。しかし,放射線照射によりプラスチックの種類によっては分解劣化などが起こるため,すべてのプラスチック製品に適用することはできない。滅菌の対象とされている医療用具は注射筒,注射針,手術用ゴム手袋,縫合糸,栄養カテーテル,輸血セット,血液透析セットなどきわめて多種多様である。

下水道の整備に伴って,生活排水を処理した後に生ずる汚泥の量が増大一途をたどり,その処分法が問題となっている。汚泥の主成分有機物であることから,これを土壌還元する方法が現在各国で研究されている。土壌還元にあたっては,汚泥の衛生処理が必要であり,放射線を照射する滅菌プロセスが注目されている。衛生化に必要な線量は0.3~0.5Mradであり,スラリー状汚泥,乾燥汚泥,ケーキ状汚泥など種々の状態でγ線または電子線を照射するプロセスが考えられており,アメリカや西ドイツパイロットプラントが運転されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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