大学事典 「教授会自治」の解説
教授会自治
きょうじゅかいじち
autonomy of the faculties
国公立大学において,大学を構成する各学部の教授会が当該学部の管理運営を自治的に遂行するという制度的慣行。学部自治とほぼ同じ意味。各学部教授会が学部の学科課程編成,入学者選考,履修方式,成績評価,学生処分等を決定するだけでなく,とくに学部の教授陣の人事(選考,任免,昇進,懲戒等)に関して外部(文部省,文部科学省)や大学執行部(学長)の介入を拒否し,独占的に決定を行うことをその中核とする。1913年(大正2),文部省が任命した京都帝国大学の沢柳総長が,独断で教授7人の罷免を断行したことから生起した大学教授の任免手続きをめぐる紛争(沢柳事件)を契機に,学問の自由と独立の確保,専門家集団による学術的人事評定の必要性をその理論的根拠として日本の大学に定着してきた。教授会構成員には,通常,教授だけでなく助教授も含まれたが,第2次世界大戦前には,教官の採用・昇進等に関する人事案件の審議・決定には教授のみが参加しうるという制限を設けている大学もあった。2004年の国公立大学の法人化以降,教授会自治の伝統は大きく揺らいでいる。
著者: 斉藤泰雄
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報