改訂新版 世界大百科事典 「教皇選挙」の意味・わかりやすい解説
教皇選挙 (きょうこうせんきょ)
electio papae[ラテン]
ローマ・カトリック教会において新教皇を選ぶために行われる選挙のこと。教皇は11世紀まで聖職者と一般信徒が選出した。しかし俗人君公貴族による教皇任命や選挙介入に対抗して1059年以来,教皇選挙権は枢機卿に限られることになった。1179年に3分の2の多数決制が確立。1274年リヨンの公会議で,外部からの介入と投票手続の延引を防ぐために有権者を封印された〈密閉区(コンクラーベconclave)〉に閉じこめる制度を教皇グレゴリウス10世が定め,それ以来コンクラーベは教皇選挙枢機卿会の代名詞となった。それでも1904年までカトリック諸列強君主は教皇選挙での候補者に対する拒否権をもっていた。今日教皇が死去し空位が生じると,教皇財務長官(カメルレンゴCamerlengo)が枢機卿団長とともに枢機卿団を代表して教皇代行となり,死去後早くて15日目おそくて19日目にコンクラーベでの選挙を行うよう準備する。パウルス6世の改革で80歳以上の枢機卿は投票権を失ったが,東方典礼の大主教は投票権を得た。教皇職への被選挙権は正統信仰を持つすべてのカトリック信徒にあるが,通常は枢機卿が選ばれる。選挙は秘密投票で,ふつうシスティナ大聖堂において,候補選出に必要な出席者数の3分の2の票が得られるまで続けられる。選出とともに白の煙が煙突から上る。被選出候補者の同意,本人による教皇名決定,着衣,枢機卿団の忠誠誓約,結果公表,新教皇による公的祝福で選挙は終わる。その後新教皇の定める日に,枢機卿団長による教皇冠(あるいはパリウム)授与式があって新治世が公式に始まる。
執筆者:澤田 昭夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報