翻訳|conclave
ローマ・カトリックの教皇の選挙。また、教皇選挙が行われる場所と選挙者の枢機卿団のことも意味する。ラテン語に由来し、直訳は「鍵(かぎ)と共に」。「共に」を意味するクムcumと、「鍵」のクラービスclavisを組み合わせた語で、鍵のかかった立ち入り禁止の場所をさす。
コンクラーベとよばれるようになったのは、1268年にイタリアのビテルボViterboで行われた教皇選挙からというのが通説である。このとき、有権者である枢機卿団の分裂によって空位の状態が3年あまりも続き、選挙が始まっても数か月にわたって合意をみなかった。そのため、宮殿に鍵をかけて枢機卿団を閉じ込め、外部との接触を断った状態で、食事の水とパンだけを運び入れたという。その結果、1271年にグレゴリオ10世が教皇に選ばれた。こうした空位の状態を長引かせないために教皇選挙の規則がつくられた。
選挙は、教皇の死後(辞任後)15日から20日の間に開始される。会場はバチカン市国のローマ教皇庁内にあるシスティナ礼拝堂である。男性信徒であればだれでも教皇に選出される権利がある(ただし、選出時に司教でない場合は、就任の前に司教に叙階される)。選挙権を有するのは80歳未満の枢機卿だけで、定員は120名以内。教皇として選ばれるためには、投票総数の3分の2以上を得る必要がある。投票は無記名で、選挙初日の午後に1回目が行われる。決まらない場合、2日目以降は午前と午後に各2回ずつ1日合計4回を3日目まで行い、それでも決まらない場合は、最大1日間の祈りの期間をとった後、同様の方法で投票が行われる。7回投票しても決まらなければ、同様に1日おいて、また投票を行う。再度の7回の投票のうちに決まらないときは、さらに1日おいて7回を限度に投票をし、その結果選出ができなければ、1日の祈りと考察の期間をおいてから、前回の投票結果の上位2名による決選投票を行い、3分の2以上を得票した者が選ばれる。
投票の結果は、選挙に用いた投票用紙をストーブで燃やし、そこにつながった煙突から出る煙(フマータfumata)の色によって知らせる。教皇が決まったときは白い煙、決まらなかったときは黒い煙で外部に知らされる。現代においては色の区別をはっきりさせるために化学薬品も加えられる。2013年3月のコンクラーベでは、白い煙は塩素酸カリウム、乳糖、松やにの混合物、黒い煙は過塩素酸カリウム、アントラセン、硫黄の化合物が投票用紙とともに燃やされた。その後まもなくサン・ピエトロ大聖堂の鐘が打ち鳴らされた後、選出された者の名が告げられ、教皇服を身につけた新教皇がバルコニーより人々に対して公式な挨拶(あいさつ)を行い、教皇として初めての祝福を送る。
第265代教皇ベネディクト16世の退位後、2013年(平成25)3月12日に始まったコンクラーベは、翌13日午後7時ころに終了。ラテンアメリカからの初めての教皇となるアルゼンチン出身の枢機卿ホルヘ・マリオ・ベルゴリオJorge Mario Bergoglio(1936― )が選出され、第266代教皇フランシスコとなった。
[編集部]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…1179年に3分の2の多数決制が確立。1274年リヨンの公会議で,外部からの介入と投票手続の延引を防ぐために有権者を封印された〈密閉区(コンクラーベconclave)〉に閉じこめる制度を教皇グレゴリウス10世が定め,それ以来コンクラーベは教皇選挙枢機卿会の代名詞となった。それでも1904年までカトリック諸列強君主は教皇選挙での候補者に対する拒否権をもっていた。…
※「コンクラーベ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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