日本大百科全書(ニッポニカ) 「文化庁メディア芸術祭」の意味・わかりやすい解説
文化庁メディア芸術祭
ぶんかちょうめでぃあげいじゅつさい
日本のメディア・アートの振興を目的に開始された芸術祭。文化庁、CG-ARTS協会(財団法人画像情報教育振興協会)、日本経済新聞社の三者からなる実行委員会の主催によって、1997年(平成9)に第1回が開催された。ゲーム、Web上の作品、インスタレーションなどを対象とした「デジタルアート・インタラクティブ部門」、CGや画像作品(静止画、動画、立体作品)を対象とした「デジタルアート・ノンインタラクティブ部門」、商業作品から自主制作作品までを対象とした「アニメーション部門」、そして「マンガ部門」の4部門によってスタートし、2003年の第7回より「アート部門」「エンターテインメント部門」「アニメーション部門」「マンガ部門」の4部門に改組された。芸術祭の前々年11月から前年10月までの間に発表された公募作品が審査の対象で、審査委員会の審議を経て各部門の大賞、優秀賞、奨励賞が決定され、審査委員会の推薦による特別賞の表彰も行われている。
メディア・アートを対象とした芸術祭は欧米でも広く開催されているが、このメディア芸術祭の特色としては「アニメーション部門」と「マンガ部門」が独立して設けられ、また「エンターテインメント部門」でもゲームの比重が高いなど、サブカルチャーを重視した姿勢をとっていることがあげられる。ここには、今や日本を代表する現代文化として国際的に認知されるようになったアニメーション、マンガ、ゲームの評価を公的なものとして確立すると同時に、曖昧(あいまい)なデジタル・アートの定義のなかにこれらのサブカルチャーを組み込んでいこうとする主催者の強い意向が反映されている。それゆえ、過去の受賞作品にはアニメーション映画『千と千尋の神隠し』(2001。監督宮崎駿(はやお))、映画『ファイナル・ファンタジー』(2001。監督坂口博信(1962― ))、アニメーション映画『クレヨンしんちゃん』(2002。監督原恵一(1959― ))など大衆的な人気を博した作品が並んでいる。
受賞作品展は東京都写真美術館(目黒区)を会場に毎春開催され、受賞作を中心に4部門の出品作の展示・上映が行われている。また受賞作家によるシンポジウムやCG-ARTS協会主催の協賛事業なども同時に開催される。2008年より、国立新美術館に会場が変更された。
[暮沢剛巳]