翻訳|teletext
文字あるいは図形の情報を符号化し、テレビジョン電波やラジオ電波の空き容量を利用して多重に放送する放送方式。文字放送ともいう。国際的には、テレテキストteletextとよぶ。
[吉川昭吉郎]
符号化した文字あるいは図形の情報を、テレビジョン電波の空き容量を利用して多重に放送し、受信側でこれを映像信号に復原してテレビ受像機に表示する放送方式。
文字多重放送には、文字や図形を画素に分解して伝送するパターン方式と、文字を符号に変えて送り、受信機に設けた文字発生機で復原するコード方式とがある。アルファベットを用いる欧米各国では、伝送速度の速いコード方式をもっぱら採用しているが、漢字を用いる日本では、両者の特長を生かした独自の混合(ハイブリッド)方式を採用している。
文字多重放送は、音声情報を視覚化して提供し、聴覚障害者や難聴者の視聴を補助することを目的に始まったが、現在では騒音が多く音声が聞き取りにくい環境下で携帯電話端末機でテレビを見るときや、静粛が求められる環境下で音を消してテレビを見るときに役だてるなど、使用目的も多様化している。
テレビジョンにおける文字多重放送は、番組と多重化して送信される文字情報を画面上で合成して表示するので、表示(オン)・非表示(オフ)を視聴者が自由に切り替えることができる。表示・非表示を切り替えられるこのような方式をクローズド・キャプション方式closed captioningとよぶ。日本の文字多重放送は、1983年(昭和58)10月NHKにより東京と大阪で実用化試験放送が始められ、1985年11月から本放送となった。当初のアナログ時代、文字多重放送はテレビジョンの走査における垂直帰線部分を使って多重化されたが、普通のテレビ受像機では帰線部分の情報を見ることができず、文字多重で送信される文字を見るには、専用のデコーダー(暗号化された電波を元に戻す装置)を購入して併用する必要があったため、利用されることは少なかった。
デジタル時代になると、テレビ受像機に文字多重放送を受信して表示する機能が設けられ、地上デジタル放送、BSデジタル放送、110度CSデジタル放送(東経110度に位置する通信衛星を使ったデジタル放送)のすべてで広く使われるようになった。表示はクローズド・キャプション方式である。初めのころ、画面全体を文字表示に使ったこともあるが、いまは画面は番組優先で、文字は番組視聴の妨げにならない程度の大きさで表示することが多い。使い方の例をあげれば、ドラマや映画などでは、音声の台詞(せりふ)をそのまま文字にして重複表示し、汽笛や銃声などの効果音は「汽笛」などの文字や「ポーッ」という擬音語などで表示する。報道番組や教養番組では、重要な情報を文字で表示する。文字の表示方法は、黒またはグレーの透明な地(バック)に、白、黄色、緑色、水色などの文字を浮き出させるものが多いが、地を不透明にして文字をさらに見やすくする場合もある。文字の色の使用方法もさまざまで、たとえば対話で主人(ホスト)は白、客(ゲスト)は黄色などと使い分けるなどの手法がある。2014年(平成26)時点では、NHKおよび民放各局では文字多重放送が採用されている番組も多く、なお増え続ける傾向にある。
なお、テレビジョン画面に表示される文字にスーパーインポーズsuperimposeまたはテロップtelopとよばれるものがある。これは文字多重とは異なり、文字を番組に組み込んで一体として送信するもので、視聴者側で非表示にすることはできない。非表示への切り替えができないこのような方式をオープン・キャプション方式open captioningとよぶ。局ロゴ、番組予告、コマーシャル、地震や竜巻などの緊急気象情報、鉄道の運転見合わせなどの緊急交通情報その他に使われる。
[吉川昭吉郎]
ラジオ放送における文字多重放送は、FM文字多重放送(DARC:data radio channel)といい、FM放送電波の空きを利用して文字情報を送信するものである。エフエム東京など全国FM放送協議会(JFN:Japan FM Network)系列のFMラジオ局が採用し、「見えるラジオ」の愛称でよばれた(エフエム東京の放送開始は1994年)。NHKは1996年(平成8)に全国八つの放送局を使って放送を開始したが、ラジオ受聴者の減少とインターネットの普及によって需要が減少したため、2007年にサービスを終了した。また、JFN系列の放送も2014年3月で終了となった。現在、DARCは、カーナビゲーションの道路交通情報通信システム(VICS(ビックス):Vehicle Information and Communication System)に使われ、渋滞情報、工事情報、所用時間などの情報を運転者に伝える手段として重要な役割を担っている。
[吉川昭吉郎]
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… 1984年9月から電電公社(現,日本電信電話株式会社)が東京の三鷹,武蔵野で実験を開始した光ファイバーによるディジタル通信網INS(Informahon Network System)〈高度情報通信システム〉,11月から同じく電電公社が回線とシステムを,民間491社が情報ソフトを提供して実用サービスを開始したキャプテン・システムは,ニューメディア・ブームの具体的なモデルケースとして大々的に宣伝された。当時の〈ニューメディア構想〉では,1990年代に,INSの全国ネットワーク,無線系の直接衛星放送,高品位テレビ放送,文字多重放送,ファクシミリ放送,静止画放送,有線系のCATV,ビデオテックス(キャプテン),VRS(画像応答システム),テレビ電話,ファクシミリ通信,さらには個別のパソコンやビデオの出力に至るさまざまな情報・通信経路が,1台の端末(テレビ受像器)に統合されるはずであった。しかし,ディジタル通信の普及に関しては,笛吹けど踊らずの状態が長く続き,INSは,やがて人知れず消えていった。…
…放送は無線通信による送信の一つの特殊な形態で,放送番組と呼ばれるまとまった情報を〈公衆によって直接受信されることを目的〉(放送法)として電波によって広く伝播することをいうが,一般にはラジオ放送,テレビジョン放送のことである。いわばあて先のない無線通信であるところから放送は他のマス・メディアにはみられないいくつかの特殊な機能をもつ。まず電波が届いている範囲内で受信装置さえあれば,だれでも簡単に享受できること,その情報が聴覚的,または視聴覚的に提示される非固定的,一過性のものであること,電波によって広く伝播されるので,同時に同じ情報に接触するおおぜいの人々,すなわち受信者,あるいは視聴者という分散した大聴衆(オーディエンス)を形成すること,継続的に情報を提示するものであるために速報性にまさり,常時,その情報を更新することができることなどがあげられる。…
※「文字多重放送」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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