文禄三年甲斐国四郡高〆控(読み)ぶんろくさんねんかいのくによんぐんたかしめひかえ

日本歴史地名大系 の解説

文禄三年甲斐国四郡高〆控(四郡高〆控)
ぶんろくさんねんかいのくによんぐんたかしめひかえ

写本 渡辺政和

解説 表紙に文禄三年の年紀と利見政吉の名・押印、帳末にも文禄三年と記され、末尾に「嘉永五申年写之、持主大明見村加賀美弥五右衛門」とある。文禄三年とあるが村高は慶長古高帳・寛永村高帳とほぼ等しく、村名の配列は山梨(まま)万力筋東光寺村から始まっており、九筋二領の配列の形式をとっている。村高の数字の異同も寛永村高帳に近い。しかし一方で山梨()郡と書かれているように、郡名・村名の表記で独自性があり、筋・領ごとに村数合計も記されている。これらのことを考慮すると、郡内領における文禄三年検地による村高を意識した年号が付された、寛永村高帳の系統を引く異本と考えられる。それは慶長古高帳・寛永村高帳双方の後半にあった寺社領の書上部分が本史料にはまったくなく、その代りに都留郡郡内領の部分が二通り写されていることからもわかる。これは所蔵者の必要性とも関連しているように思われる。その意味で、本史料は都留郡の村名・村高について注目すべきであるが、該当部分についてみると、初めの筆写のほうは鶴嶋村から始まって山中村で終わり、次のほうはお(小)沢村から始まって小西村で終わっており、同じ法能村でも一四七石二斗二升と四七石二斗二升とあるように、両者の村高・村名の表記・順の差異は著しい。この都留郡の部分については、文禄三年とされる都留郡御高帳(「富士吉田市史」近世史料編)ともまったく異なっている。都留郡の村々は、他の三郡と比べて寛文検地以降近世村落の分立が行われる傾向にある(「大月市史」史料編統計近世)。近世初期の村切と寛文期以降のそれとを比較するうえでも重要な史料といえよう。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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