斎・寵・傅(読み)いつく

精選版 日本国語大辞典 「斎・寵・傅」の意味・読み・例文・類語

いつ・く【斎・寵・傅】

[1] 〘自カ四〙 (斎) 汚れを忌み、清浄にして、神に仕える。
※古事記(712)上「吾をば倭の青垣の東の山の上に伊都岐(イツキ)奉れ」
※霊異記(810‐824)下「其の女の家の内に、忌籬(いがき)を立てて斎(イツク)。〈真福寺本訓釈 斎 イツク〉」
[2] 〘他カ四〙 (寵・傅) たいせつにする。かわいがる。
万葉(8C後)一八・四一一〇「さぶる子が伊都伎(イツキ)し殿に鈴かけぬはゆま下れり里もとどろに」
源氏(1001‐14頃)若紫「うちに奉らむなどかしこういつき侍りしを」
[語誌](1)「いつ(厳)」の派生語で、本来は潔斎して神へ奉仕する意味。
(2)類義語「いはふ(斎・祝)」との意味上の区別は難しいが、古代では、「いつく」は対象をあがめる面が強く主に神官の行為にいい、「いはふ」は吉事を招くという目的の面が強く、一般人の行為にもいう。
(3)「いつきのみこ斎皇女)」などは原義を残す用法だが、平安朝の物語では転じて、一般人が対象を崇めるように大切にする意が生じ、「あがむ(崇)」「うしろみる」「かしづく(傅)」に近接してくる。

いつき【斎・寵・傅】

〘名〙 (動詞「いつく(斎)」の連用形の名詞化)
① (斎) 汚れを忌み、清浄にして神に仕えること。また、その場所。神をまつる場所。
書紀(720)仁徳四〇年二月・歌謡はやぶさは 天(あめ)にのぼり 飛びかけり 伊菟岐(イツキ)が上の 鷦鷯(さざき)とらさね」
② (斎) 「いつきのみこ(斎皇女)」の略。
※源氏(1001‐14頃)賢木賀茂のいつきには、孫王の居給ふ例、多くもあらざりけれど」
③ (寵・傅) 大切に養育すること。
幸若大織冠(室町末‐近世初)「みづからと申はけいたむこく大王のいつきの姫にてさぶらふなるが」

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