浜松中納言物語(読み)はままつちゅうなごんものがたり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

浜松中納言物語
はままつちゅうなごんものがたり

平安時代後期の物語。6巻。首巻を欠き,現存するのは5巻。正しくは『み津の浜松』。作者は通説では菅原孝標 (たかすえ) 女とし,『更級日記』執筆後の作とする。夢に生きる幻想的な転生物語として,平安時代の物語のうち最も伝奇性の強い作品である。本作の影響を受けたものとして,藤原定家の作といわれる『松浦宮物語 (まつらのみやものがたり) 』がある。

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百科事典マイペディアの解説

浜松中納言物語【はままつちゅうなごんものがたり】

平安後期の物語。菅原孝標女(たかすえのむすめ)の作と伝えられる。日本,唐を舞台に,源中納言の恋愛をめぐって不思議な宿世の因縁と転生が描かれる物語で,《源氏物語》の影響や《更級日記》との共通点などが指摘されている。6巻のうち首巻を失い,5巻を伝える。三島由紀夫の小説《豊饒の海》に影響。
→関連項目松浦宮物語

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世界大百科事典 第2版の解説

はままつちゅうなごんものがたり【浜松中納言物語】

平安後期の物語。作者は菅原孝標女(たかすえのむすめ)か。原名は《御津の浜松》で5巻現存,首巻散逸。故宮の息中納言は,義父の大将が式部卿宮に嫁がせると約束していた大将の娘大君と契り,大将を困惑させる。折から中納言は亡父が唐の皇子に転生していると伝聞し,夢にも見て渡唐する。そこで転生の皇子とその母后に会って,母后に心ひかれ,のち,はからずも契り男子が生まれる。この母后は遣日使と日本の上野宮との間の子であった。

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大辞林 第三版の解説

はままつちゅうなごんものがたり【浜松中納言物語】

物語。五巻。首巻を欠く。菅原孝標女たかすえのむすめ作と伝える。1053年頃成立か。浜松中納言の唐土にまで及ぶ恋愛を描き、夢と転生に関する叙述が多い。御津みつの浜松。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

浜松中納言物語
はままつちゅうなごんものがたり

平安後期成立の物語。現存5巻であるが、首部に1、2巻の欠巻がある。藤原定家筆、御物本『更級(さらしな)日記』奥書に「常陸守(ひたちのかみ)菅原孝標(すがはらのたかすゑ)の娘の日記也(なり)。(中略)夜半(よは)の寝覚(ねざめ)、御津(みつ)の浜松、みづから悔(く)ゆる、朝倉などは、この日記の人の作られたるとぞ」と、『御津の浜松』(原題)の作者に関する伝承が記されているのと、夢の頻出や、その浪漫(ろうまん)的精神の共通性などより、『更級日記』の作者と同一である可能性がきわめて高い。冒頭散逸部を、『拾遺百番歌合(うたあわせ)』『無名草子(むみょうぞうし)』『風葉集』の引用記事や、現存部の内部徴証より推定すると、故式部卿宮男(しきぶのきょうのみやのむすこ)の源中納言(げんちゅうなごん)は、母が再婚した相手の左大将を疎むが、娘の大君(おおいきみ)とは深い仲となる。しかし亡父への慕情に耐えられないでいると、夢告に亡父が唐土の第三皇子に転生したとあり、渡唐するが、その後、残された大君は懐妊し、剃髪(ていはつ)して姫君を出産した。ここより現存巻一が始まり、渡唐した中納言は唐土の皇子に対面するが、その母であり、父を日本人にもつ河陽県の后(きさき)とひそかな間柄となり、悶々(もんもん)のうちに、唐后が生んだ男子を連れて帰国した。そして出家した大君と清らな仲を続けようと思うが、唐后の異母妹である吉野の姫君を引き取って苦悩するうち、姫君は好色な式部宮に誘拐(ゆうかい)され妊娠した。しかし身ごもった子が唐后の転生であるとの夢告に、唐后への愛を求める主人公は複雑な感慨に沈んだ。以上のように、場面が日本と中国とにまたがったり、夢告による転生を繰り返すなど新奇な筋立てではあるが、登場人物には『源氏物語』における光源氏、藤壺(ふじつぼ)、紫上(むらさきのうえ)、弘徽殿女御(こきでんのにょうご)、薫君(かおるのきみ)、匂宮(におうのみや)たちが強い影を落とし、本質的にはその模倣の域を出ない。しかし、その浪漫的精神の特異性に目を向ければ、これが定家の『松浦宮物語(まつらのみやものがたり)』や、三島由紀夫(ゆきお)の『豊饒(ほうじょう)の海』執筆のモチーフとなった影響力が注目される。江戸初期をさかのぼる伝本がなく、本文上不明の箇所が目だつ。[池田利夫]
『松尾聡著『平安時代物語論考』(1968・笠間書院) ▽同校注『浜松中納言物語』(『日本古典文学大系77』所収・1964・岩波書店)』

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