家庭医学館 「新生児の呼吸障害」の解説
しんせいじのこきゅうしょうがい【新生児の呼吸障害 Respiratory Disturbances】
早産(そうざん)にともなう呼吸障害には、呼吸中枢が未熟なためにおこる無呼吸発作(むこきゅうほっさ)と、サーファクタントという肺胞(はいほう)の表面張力をコントロールする物質が不足して肺がふくらみにくくなる呼吸窮迫症候群(こきゅうきゅうはくしょうこうぐん)とがあります。
正期産(せいきさん)・過期産(かきざん)にみられる呼吸障害には、胎児仮死(たいじかし)にともなう胎便(たいべん)吸引症候群と気胸(ききょう)とがあります。
早産、正期産いずれでもおこるのは、産道(さんどう)を通るときにB群溶連菌などに感染する新生児肺炎です。そのほか、新生児の呼吸障害の原因として、先天異常による横隔膜(おうかくまく)ヘルニア、食道閉鎖をともなった気管食道瘻(きかんしょくどうろう)、羊水過少(ようすいかしょう)による肺低形成(はいていけいせい)などがまれにみられます。
[検査と診断]
呼吸困難の症状は、多呼吸・呻吟(しんぎん)(うなり声)・陥没(かんぼつ)呼吸(胸骨下(きょうこつか)や肋間(ろっかん)が息を吸うとくぼむ)があります。また、呼吸を10秒以上休む、無呼吸という呼吸調節障害も早産児には多くみられます。
皮膚の色が悪いと酸素不足が疑われますが、経皮的(けいひてき)酸素濃度計やパルスオキシメータを使うと、からだの中の酸素不足状態が簡単に正しく診断されます。胸部X線検査もたいせつです。
[治療]
酸素吸入を行ないますが、改善しなければ、気管内に管を挿入して人工呼吸器を使用します。
サーファクタント不足には、ウシの肺からつくられた人工サーファクタントを気管内に与えます。
胎便吸引症候群では胎便による肺炎をおこします。気胸(ききょう)などを合併すると肺が損傷されるため、重症の場合は体外式膜型人工肺(たいがいしきまくがたじんこうはい)(ECMO)を使って治療します。軽症の場合は、酸素吸入だけで数日で改善します。
そのほか、細菌感染には抗生物質が使用され、先天性の形態異常の場合は小児外科のある病院に転院して確定診断を受け、手術治療を受けます。