新羅之記録(読み)しんらのきろく

日本歴史地名大系 「新羅之記録」の解説

新羅之記録
しんらのきろく

二巻

別称 松前国記録 松前景広著

成立 正保年間

写本 奥尻松前家・市立函館図書館

解説 松前藩が寛永二〇年に幕府に提出した松前家の系図記述補足・訂正して編纂した現存する松前藩最古の記録で、特異な漢文で書かれている。内容は、松前家が始祖と称する新羅三郎義光(源頼義の三男)以来正保三年までの松前家代々の事蹟を編年体で述べる。高倉新一郎本書について「松前家の遠祖の記述には多くの粉飾を認めざるを得ないが、しかもなお和人による北海道支配の成立過程をこれほど詳細に記したものはなく、本書はまさに北海道の記紀とも称すべき文献である」(新北海道史)と記している。

活字本 昭和一二年刊・「新北海道史」第七巻史料一

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「新羅之記録」の意味・わかりやすい解説

新羅之記録
しんらのきろく

松前(まつまえ)・蝦夷地(えぞち)を支配した松前藩の現存する最古の歴史書。別に『松前国記録』『新羅記』などの名で伝写されている。1643年(寛永20)に幕府に呈上した家譜をもとに、その間違いや不備を正そうとして、藩祖松前慶広(よしひろ)の六男景広(かげひろ)が編纂(へんさん)した。特異な和様漢文を用い、新羅大明神の縁起から説き起こし、松前家の始祖とされる蠣崎信広(かきざきのぶひろ)から第8世松前氏広(うじひろ)に至る代々の業績を年代記的に叙述している。1646年(正保3)に景広が近江国(おうみのくに)園城寺(おんじょうじ)(三井寺(みいでら))境内の新羅大明神に参詣(さんけい)した際に、光徳寺の僧祐怡に浄書させ、子孫のため家に伝えたという。『新羅之記録』の名は、松前氏の遠祖が新羅三郎源義光(よしみつ)とされるところからきている。

[小林真人]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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