系図(読み)けいず(英語表記)genealogy

翻訳|genealogy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

系図
けいず
genealogy

血縁関係をはじめ,財産,地位,学芸などの継承関係などを明らかにする系譜を図式の形で表現したもの。 (1) 日本では次の2種類に分けられる。 (a) 血縁の継続関係を示すもの。その表記法に2種類ある。古いものは竪 (たて) 系図と称し,上から順次下に書き継ぎ,紙を下につなぎ合せていく。9~10世紀頃にできた『和気系図』 (大師系図) ,『祝部系図』『伊予新井氏系図』などが現存最古のものといわれる。後世,最も普及したものは横系図と称し,親子関係を縦線,兄弟姉妹関係を横線でつなぎ,表記も右から左へ,紙も横長につなぎ合せるもので,線の引き方,朱点の加え方,官途,名のりの書き順など種々に工夫され,表記法は非常に複雑化した。鎌倉時代になると,貴族,武士ともに諸流濫立しておのおのの世系を誇ったが,よく整理されたものではない。室町時代に洞院 (とういん) 公定が,日本の代表的な氏族である源平藤橘の4氏について系図を収集,校定して『尊卑分脈』と題する一大系図を作成した。江戸幕府は『寛永諸家系図伝』『寛政重修諸家譜』などの諸大名家の系図を編纂した。なお,皇室系図には『本朝皇胤紹運録』がある。朝鮮では朝鮮王朝 (李氏朝鮮) 以来,氏族的家族制度の維持のため,系図の作成が特に盛んであった。 (b) 血縁関係以外の系図には,宗教上の系統を示す伝法血脈,仏舎利継承系図,宗派図,諸寺院の別当,住持などの系図,学芸面における和歌の道統歌,琵琶の相承系図,財産としての荘園所領の相続を示す伝領系図などがある。 (2) 西洋での系図の最も原初的で素朴な形は,古代の神話や英雄叙事詩などに見出され,そこでは,たとえばイスラエル民族の歴史 (旧約聖書) の場合のごとく種族や地方が人格化されていることが多い。固有の意味の系図が成立するのは,とりわけ,慣習法秩序のなかで封建的な「特権」を維持,主張することが本質的な意味をもつようになった中世においてであり,王侯貴族の家門も修道院などの宗教団体も,盛んに系図をつくり,必要とあらばその偽造も辞さなかった。特権のシステムが存続するかぎり,近代になってもこの状態は続くが,ルネサンス以来,文献学の発達とともに系図に対する批判的な研究が始り,18~19世紀には,歴史学の補助科学としての系譜学が成立をみるにいたり,正確な系図集成も多く刊行された。

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デジタル大辞泉の解説

けい‐ず〔‐ヅ〕【系図】

先祖から子孫に至る一族の系統を書き記した表。系譜。家譜。家系図。
由来。来歴。「古典派音楽の系図をたどる」

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百科事典マイペディアの解説

系図【けいず】

系譜を図示したもの。口誦(こうしょう)をそのまま図化した素朴な縦系図と,多くの系譜を集成して長大になったときに便利な横系図とがある。→寛政重修諸家譜尊卑分脈

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世界大百科事典 第2版の解説

けいず【系図】


【日本】
 混用して系譜ともいう。先祖から代々の血統続柄,家系を記述した文書をさす。狭義には,系譜は次第を追って血統と子孫の各個人の事歴を記述したものであるが,系図は血縁の継続状態をとくに系線によって図示し,そのつながりを一見して理解しうるようにしたものである。のち広義には系譜,家譜をも含め,家に付属する財産,所領,職業の継承を特記し,さらに僧侶の法脈・血脈(師資相承),寺院の住持の歴代,学術・武術をも含む諸芸の伝統をも表したものをいうようになる。

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大辞林 第三版の解説

けいず【系図】

先祖以来の一族の人々の血縁関係を示した図。
来歴。由来。由緒。 「砂糖饅頭は近来の出来物、なにの-もなし/咄本・醒睡笑」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

系図
けいず

祖先を記し、子孫の系統を明らかにするために、家系を図式化して示したもの。系譜、家譜(かふ)ともいう。洋の東西を問わず古くから神話、史書には血統の系列を示す記事がある。古代エジプトの碑にもみられる。
 日本での現存最古のものは、9~10世紀ごろ成立の三井寺(みいでら)所蔵の和気(わけ)系図、京都府宮津町籠(この)神社の海部(あまべ)系図、大倉氏所蔵伊予新井(あらい)系図などである。その後、12世紀平安時代末から諸氏の系図が多く現れるようになった。系図の書き方には大別して縦系図と横系図という2通りがある。縦系図は紙を縦に継いで、系図も上から下へと書き継ぐもので、横系図とは、紙を普通の巻物のように右から左へ継ぐか、あるいは書物のように綴じ、系図も横に線を伸ばして書くものである。このうち、前者のほうが古い成立といわれている。南北朝時代に洞院公定(とういんきんさだ)が公家(くげ)武家の系図を集大成して『尊卑分脈(そんぴぶんみゃく)』をつくり、後世の系図の基本とした。江戸時代になると徳川幕府の手で大名、旗本の系図を集成し、『寛永(かんえい)諸家系図伝』や、それを重訂した『寛政重修(かんせいちょうしゅう)諸家譜』をつくった。塙保己一(はなわほきいち)も諸家の系図を多く集め、『群書類従(ぐんしょるいじゅう)』『続群書類従』に収めた。
 系図は単に人の血統を表現するだけでなく、財産や政治的・社会的地位の継承を示すものとして尊重されるので、その記載をめぐって古くから虚偽や作為が仕組まれることが多かった。古代の「盟神探湯(くかたち)」が氏を正すために行われたというのも、系図の正確さを求めるものであった。中世以降においても、偽(ぎ)系図がみられたり、「系図買い」と称して系図づくりが横行するほどであった。[飯倉晴武]

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世界大百科事典内の系図の言及

【寛永諸家系図伝】より

…清和源氏・藤原氏・平氏・諸氏の4類,および医者・同朋・茶道に分け収録。1641年2月7日に太田資宗が諸家の系図を編修し差し上ぐべき旨の上意をうけ,同人が総裁,林羅山・鵞峰が編集責任者となり事業を推進,43年9月17日に両本都合372巻が献上された。献上の仮名本(続群書類従完成会より活字本刊行中)は内閣文庫に,真名本(重要文化財)は日光東照宮に所蔵されている。…

【系譜学】より

…系譜または系図を究める学問をさし,古くは古代オリエントにあって,神話上・伝説上の英雄に起源を求めた家系譜が作られている。新約聖書《マタイによる福音書》の冒頭の,アブラハム,ダビデ王からイエスにいたる系譜は典型である。…

【先祖書】より

…また,伝来の古文書を記載したものもある。系図が次・三男,女などを記載するのに対し,先祖書は直系のみを記載し,プライベートな記述がないことが多い。仕官のときや,家臣団の家系調査などのとき提出させた。…

【判鑑】より

…通行手形吟味のために関所,番所に備えられた判鑑はその代表例である。なお,家の系図に歴代の花押影を書き入れて判鑑と称した例(喜連川(きつれがわ)判鑑)もあるが,これは上記の判鑑と機能,目的を異にするものである。 明治以降,印章の証拠力が花押に優越するようになり,照合用の印影を登録する印鑑の制度が整うのにともなって,判鑑は効用を失った。…

【琉球】より

…17世紀後期から18世紀中期にかけてのことである。
[行政機構の概要]
 近世では,系図による身分の区別が用いられ,系図をもつ身分を士(系持(けいもち)),もたない身分を百姓(無系(むけい))とした。また,冠の色,文様による位階の区別も伝統を引き継いで行われた。…

※「系図」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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