日光山縁起(読み)につこうさんえんぎ

日本歴史地名大系 「日光山縁起」の解説

日光山縁起
につこうさんえんぎ

解説 日光三社ならびに宇都宮二荒山神社の縁起。有宇中将朝日姫の話、二荒山三神(男体・女峰・太郎の神)の話、下野男体の神と上野赤城の神との戦い猿丸の話などの物語。「新編会津風土記」巻一〇所収本の実川本(至徳二年奥書。新潟県東蒲原郡鹿瀬町実川地区に伝えられたもので、現在は新潟県五泉市猪俣寅三氏の所蔵)、二荒山神社蔵本(下巻)、愛媛県大洲市宇都宮神社蔵「日光山並当社縁起」(文明九年奥書)が知られ、真名本系として林羅山「二荒山神伝」、「日光山権現因位縁起」(二荒山神社蔵)、また同系仮名本として「日光宇都宮因位縁起」(天文二三年奥書、神宮文庫蔵)、仮名本系の「下野国二荒山縁起」(国立公文書館蔵)などがある。

活字本日光市史」史料編上

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「日光山縁起」の意味・わかりやすい解説

日光山縁起 (にっこうざんえんぎ)

霊山縁起の一つ。日光権現の縁起で,室町中期の撰。2巻。著者未詳。上巻は,有宇(ありう)中将(男体権現)は才芸にすぐれ,忠勤に励んだが,鷹狩を好んだことで帝のいかりにふれ,下野にたちよったのち陸奥国に下向朝日長者の娘(女体権現)をめとり,のち病没したことを記す。下巻では中将が蘇生して妻,子と日光三所権現として現れたこと,中将の孫にあたる小野猿丸が,大蛇の姿の日光権現と百足(むかで)の姿の上野国赤城明神との神いくさに,日光権現を助けたことなどを記す。《新編会津風土記》にも所収。他に同名の絵巻5巻があり,詞書は霊元天皇以下20余人,絵は狩野洞春,1720年(享保5)撰。内容は異なり,輪王寺に架蔵されている。
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世界大百科事典(旧版)内の日光山縁起の言及

【ムカデ(蜈蚣∥百足)】より

…日光権現はおおいに喜んで万三郎に全国いたるところの山を狩場として獣を狩ることを許し,この故をもって末代まで狩猟を事とする者は万三郎を職祖と仰ぐという縁起である。この縁起は絵巻として《日光山縁起》となり,また猟師の秘巻〈山立根元記〉などの名で奥羽地方の狩猟者が伝承している。柳田国男はこの説話は,下野地方に移住した藤原一族が伝えるその祖俵藤太(藤原秀郷(ひでさと))の近江三上山の蜈蚣退治の話をもとに,日光権現を信仰する一派が構想普及したものと考えた。…

※「日光山縁起」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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